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十七夜【タイトル未定】
17-12
しおりを挟む「こんにちは、椎娜ちゃん。」
「・・・こんにちは、岐津さん・・・」
「ねぇ、そんなガチガチに警戒しないでよ。捕って食いやしないって(笑)」
黒木の件を処理してもらった事もあるし、桜太の反対を押し切り、私は岐津さんに2人で会う時間をもらう事にした。
最後の最後まで『ねぇほんとに?ほんとに2人で会うの?』とゴネゴネしていた桜太だったが、私の決意が変わらないのがわかると、不機嫌になりながらも送り出してくれたのだった。
「桜太の腕は?順調?」
「はい、おかげさまで・・・」
岐津邸でのゼロ→桜太襲撃事件(私はそう呼んでいる)から1週間、桜太の傷の経過は順調で、先生からも『こんなに早くあの傷がよくなってくるなんて何者だね、君』と言われていた。
「そっか、よかった。横恋慕しようとしてる俺が言うのもなんだけど・・・命に関わらなくてホッとしてる・・・。」
「・・・・・・ゼロは・・・?その・・・生きてるんですか?」
助手席に乗った私に少し驚いて、けれどふっと嬉しそうに微笑み、岐津さんはエンジンをかけた。
「助手席に乗ってくれるくらいには信用してくれてるってことかな。」
そう言われて、2人だというのに自然に助手席に乗ってしまった事に、無遠慮だったのではとか、配慮するべきだったのではないかと不安が生まれてくる。
「・・・っ・・・岐津さんは、無理にはしないです。」
「え~・・・?わかんないよ~?俺も男だよ?」
「・・・・・・岐津さんはしない、です・・・・・・」
「・・・はぁ・・・ずるいね、椎娜ちゃん・・・。」
じっと瞳を合わせての攻防戦。
岐津さんは、嫌がる事はしない・・・気持ちがわからないままそういう事に及ぶことはない・・・それは、身勝手に私が押し付けた<信頼>かもしれないけれど、私が知っている岐津さんはそういう人だったから・・・。
絶対にブレない強い瞳が困惑したように揺れて、ふっと逸らされた。
そのままサングラスをして、ギアを入れ替える。
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