徒然なる恋の話

焔 はる

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十七夜【タイトル未定】

17-1

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まだ1日しか経っていないのに、そこは一緒に過ごした時間がある桜太の部屋と思えない程、張り詰めた緊張感に包まれていた。


「・・・椎娜、さっきの・・・」


「・・・桜太、手伝うから着替えて傷の周り綺麗にしよう?」


「・・・・・・椎娜・・・・・・」


病院で処置をする際に、切り裂かれていたワイシャツは裂いてしまったので、桜太は半裸にジャケットを羽織っているだけだ。

これではさすがに寒いだろうし、包帯を巻いた上腕から指先、それに胸やお腹、顔にも血液が付着し、渇いてカピカピになって変色し張り付いている。


「お風呂はダメって言ってたから・・・腕とか洗えるところは水道で洗って、身体は・・・」


「ねぇ、椎娜・・・なんで・・・一緒に来てくれたの・・・?」


破れて血が固まったジャケットに手を掛けた私に、不安と戸惑いを含んだ桜太の声が高い場所から落ちてくる。


「・・・なんでって・・・私、桜太の彼女じゃないの・・・?」


ジャケットを脱がせて、私を守るために血を流したひとを見上げる。


腕に抱き締めたジャケットはもう着られない、敗れて血にまみれて、ボロボロになった、それは服だけじゃなくて・・・



「でも・・・もう俺といたくないんじゃないの?だから、さっき・・・」



「・・・結婚前提、婚約(仮)かっこかり、それはもう無効なの・・・?」



「無効なわけないだろ!!俺が・・・どれだけ椎娜を離したくないか・・・」



「・・・・・・また・・刺されちゃったね・・・私のせいで、桜太はまた痛い思いをした・・・ごめんね・・・」



背中に残る、今の桜太が知らない過去の傷。


私絡みでまた桜太は傷を負った。



・・・・・・泣いてる・・・・・・


桜太が・・・泣いてる・・・



「椎娜を失うより、腕1本失う方がマシだよ・・・」



「・・・・・・ばかだね・・・桜太・・・・・・」



時間にしたらものすごく短いすれ違いの末の家出。



まだ何も解決していないし、なんなら岐津さんからの告白と、桜太の怪我、ゼロの事は大丈夫と柊誠さんは言ってくれたけど、それも何もないかはわからない、あと・・・水無瀬くんがまた接近して来ないか保証もない。


何1つ解決していない。



でも・・・



・・・・・・・・・・・・



「・・・ごめん椎娜・・・」



「・・・・・・・・・守られたくない・・・桜太が目の前でいなくなるのは、もう嫌だ・・・・・・」



守られて桜太を失うくらいなら、一緒に死んでしまう方がいい。



残される痛み、苦しみにはもう耐えられないから・・・



「・・・あの頃の私たちを変える事ができるのなら、私の初めても、桜太の初めても2人のものなのに、そんな事できない・・・」



「うん・・・ほんと、ごめん・・・」



「・・・・・・でも、今も、未来も、一緒にいたいのは桜太だよ・・・・・・」





見開かれた瞳が少しだけ潤んでいたのは、怪我による発熱か、泣き虫桜太が発動中なのか・・・。




ーーーー様子を伺いながら伸ばされた腕が私を抱き寄せて、硬くて熱い、この世界のどの場所よりも一番安心できる腕の中に私は戻る事が出来たのだった。



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