徒然なる恋の話

十六夜【消えたい？消したい？掃除屋との遭遇】

16-34

マンションの前で横づけされた車。

桜太の車は後日引き取りに行くと話をして、病院に行く時は加佐見さんが迎えに来てくれる事になった。


「本当にすまない、なんだか君たち２人には迷惑ばかりかけているね･･･」


「いえ･･･生きてたんで大丈夫です。」


「いや、本当に笑えない話だよ･･･」


スゥ･･･っと鋭くなった柊誠さんの瞳に、『あぁ、やはりこの人は･･･その社会で生きる人なのだ』と改めて実感した。


「･･･ゼロの事は気にしなくていい。でも、椎娜ちゃん」


一瞬桜太に向いた視線が、言葉にするか迷った末に私へと向いた。


「･･･元春の事、きちんと見てやってほしい･･･。年齢も君よりかなり上で、桜太くんともタイプは全然違う、押し付けるわけじゃないけれど、･･･ふざけて言ったわけじゃないと思うんだ･･･。だから･･･。」


「･･･柊誠さん、ちゃんと考えます･･･私。」


「ちょッ椎娜ッ！」


「･･････自分の事だし、自分を思ってくれる人の事･･･私、自分で答えを出したいんです。」



どんな状況でも、どんな言葉があっても、自分で考えて見極めなきゃダメだ･･･。


それは、いつまでも昔の事を引きずり、状況に引っ張られてふらふらしてたらダメだという事。


私が生きるのは今、そして未来だ。


過去に捕らわれて進めなくなるわけにはいかない。


それが、過去との本当の意味での決別になるはずだから･･･。



消えたいのではない、今、誰かを消したい、捨て去りたいのではない。



私は･･･



･･････私は共に生きていきたい人がいるから･･･



消えるわけにも、消すわけにもいかないんだ。




それが、私の答えだから･･･。