徒然なる恋の話

十六夜【消えたい？消したい？掃除屋との遭遇】

16-26

「っ･･･」


蓋を開けようと手を捻った桜太が顔を顰めた。


「･･･はい」


私は、桜太の手からペットボトルを抜き取り、開いた手の中へ、蓋を開けたペットボトルを握らせた。


「･･････ありがとう」


「ん」


なんとなく気まずい。


なんとなく居心地が悪く、ムズムズする車内の空気。


ニヤニヤしている柊誠さん･･･


「ふ～～～ん･･････かわいいねぇ～～～若いなぁ～～ッ」



見た事のない顔でキャッキャして、お付きの人に「ねぇ、ビールないの？」と尋ね、「ないですよ」と苦笑いされる
可愛い柊誠さん。


キャップを外したボトルから水を喉に流し込み、ニコニコしている柊誠さんに桜太が尋ねた。


「あの･･･柊誠さん･･･」


「ん～？なに？」


「･･････初めてシた女って覚えてますか？」


「･･････え？(笑)どういうこと？(笑)」



私は、真剣すぎるほど真剣に尋ねる桜太が可笑しくて、恥ずかしくて、どこを定位置として身を置いたらいいのか、どこにいても安定しない場所にいるような、隠れる場所もなく晒されているような、逃げ場のない贄のように縮こまって、男性２人の会話を見守るしかなかった。

意外過ぎる質問に柊誠さんは面白くて笑いそうなのをできる限り堪え、桜太の真意を引き出そうとしている。


「それで？(笑)どういう･･･(笑)」


･･･柊誠さん、誤魔化せてないですよッ


「･･･俺は、初めての女は椎娜じゃなかったんですけど･･･柊誠さんは･･･？今の奥さんでした？」


「まさか。」


桜太の質問に対しての「驚き」のまさか。


「今の奥さん、依織と知り合ったのは依織が高校生の時だし、１０歳下なの。それまで童貞なわけないじゃん、俺の初めては･･･」


柊誠さんの視線は、さっき水を渡してくれた男性に向けられている。


え･･･


え･･････？？


どういうこと？？