徒然なる恋の話

焔 はる

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十六夜【消えたい?消したい?掃除屋との遭遇】

16-20

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「・・・まぁ、大事にしろよ。」



「・・・・・・・・・失礼します。」




またな、という言葉もなく、岐津さんは遠くを見るように煙を吐き、どちらも視線を合わせないまま離れる。


手入れされた庭に面した長い廊下を、来た時と同じ道順で戻る途中、




「・・・・・・ん・・・え・・・お、ぅ、た・・・・・・」




揺れで目を覚ました椎娜が腕の中から俺を見上げた。


驚きと気まずさ、どうして俺がここにいるのか、収束の糸口を掴めない、<出戻り別居>みたいな状況を打開したくて、俺は・・・



「椎娜、ちゃんと話したい。このままは嫌だから。」


「・・・・・・うん、私も話したい・・・・・・」



腕の中の椎娜が俺に自分を預けるように身体から力を抜いて、胸に頭を預けた。


まだ解決はしていないけれど、今この瞬間は、椎娜が俺の腕へ戻ってきた安堵感に強く椎娜を抱き締めた。


・・・いつもなら、髪にキスするけど、なんか・・・嫌がられたら・・・台無しになる、そう思ったら抱きしめる事しか出来ず、俺は車へと歩を進めた。




「あれぇ~?椎娜ちゃん帰っちゃうの~?オレ、もっと遊びたかったのに~、誘拐??大丈夫?合意の上??」



屋敷の外に出たところで遭遇したのは、あのゼロという男・・・。

なんでこんなにこいつ傷だらけなんだよ・・・

へらへらした話し方で人をおちょくって馬鹿にして・・・

しかも椎娜を椎娜ちゃんって気安く呼びやがって・・・



ゼロは手に何かを持ったまま俺に近づき、逆手に握ったソレを振った。


一瞬光ったソレに俺は反射的に椎娜を庇って半身を捻ったが、


「っ・・・」


「え・・・?え・・・?おうた・・・桜太・・・!!」


俺の腕からズリズリと下りる椎娜が、裸足のアスファルトに足を着いた。


「ッ・・・ぁ・・・しいな、足、汚れる・・・ごめん・・・」


俺はパックリと切り裂かれた左腕の二の腕を抑え、指の間からじんわりと流れ出る鮮血に、「あ~やばいな・・・面倒な事になったかも・・・」と痛みに顔を歪め、椎娜の肩を右手で抱いた。







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