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十六夜【消えたい?消したい?掃除屋との遭遇】
16-8
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「理由なんてそんくらいしかないだろ。もしあるとすれば、あの家にいるだけの鳥籠生活に椎娜ちゃんが飽きた、とか。」
「飽きて、は・・・」
笑っている、でも、見透かされている気がした。
飽きたんじゃない・・・
飽きたんじゃない・・・
「当たり前に感じる、愛情の煩わしさ?」
心臓が跳ねた。
言い当てられて、熱くて、痛い心臓。
「見てても鬱陶しいくらい、桜太、椎娜ちゃんの事大好きだもんな、鬱陶しいくらい。当たり前に感じるのは、椎娜ちゃんがあいつを受け入れたからじゃない?付き合ってる関係がようやく馴染んだっていうかさ。当たり前っていうのは、失ったら困るものだよ。思いを煩わしいと感じるなら、きちんと話すべきだと思うな。あいつと。」
鬱陶しいくらい。
岐津さんが2回言葉にしたのが胸に刺さる。
いつまでも消えない、どうして桜太はずっと変わらずに私を好きだと言ってくれるのか、でももしかしたらそれも『いつか』失われるかもしれない。
鬱陶しいくらいの桜太の愛情を昨日振り払い、距離を空けたのは私。
不思議なほど桜太といた時間にも、今離れている事にも現実感がなくて、言ってみれば<ふわふわ>した感覚。
どうやって生きていたのか、どんな風に自分の存在を確認していたのかわからなくなっていた。
「さっき、あいつに手掴まれてて嫌じゃなかった?」
岐津さんが、ペットボトルのお茶を注いだ透明なグラスが、氷が崩れてカランと音を立てた。
「あいつを勧めるわけじゃないけど、男は桜太だけじゃないし、君を苦しめる男は・・・黒木はもういない。君はなんでも選べる、自分で選べるんだよ。」
身を乗り出してテーブルに腕を着いた岐津さんの、手が髪に触れる。
ふわっと香る香水に、私は動けないまま、耳元にシャラッというブレスットの音を聴いた。
「飽きて、は・・・」
笑っている、でも、見透かされている気がした。
飽きたんじゃない・・・
飽きたんじゃない・・・
「当たり前に感じる、愛情の煩わしさ?」
心臓が跳ねた。
言い当てられて、熱くて、痛い心臓。
「見てても鬱陶しいくらい、桜太、椎娜ちゃんの事大好きだもんな、鬱陶しいくらい。当たり前に感じるのは、椎娜ちゃんがあいつを受け入れたからじゃない?付き合ってる関係がようやく馴染んだっていうかさ。当たり前っていうのは、失ったら困るものだよ。思いを煩わしいと感じるなら、きちんと話すべきだと思うな。あいつと。」
鬱陶しいくらい。
岐津さんが2回言葉にしたのが胸に刺さる。
いつまでも消えない、どうして桜太はずっと変わらずに私を好きだと言ってくれるのか、でももしかしたらそれも『いつか』失われるかもしれない。
鬱陶しいくらいの桜太の愛情を昨日振り払い、距離を空けたのは私。
不思議なほど桜太といた時間にも、今離れている事にも現実感がなくて、言ってみれば<ふわふわ>した感覚。
どうやって生きていたのか、どんな風に自分の存在を確認していたのかわからなくなっていた。
「さっき、あいつに手掴まれてて嫌じゃなかった?」
岐津さんが、ペットボトルのお茶を注いだ透明なグラスが、氷が崩れてカランと音を立てた。
「あいつを勧めるわけじゃないけど、男は桜太だけじゃないし、君を苦しめる男は・・・黒木はもういない。君はなんでも選べる、自分で選べるんだよ。」
身を乗り出してテーブルに腕を着いた岐津さんの、手が髪に触れる。
ふわっと香る香水に、私は動けないまま、耳元にシャラッというブレスットの音を聴いた。
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