徒然なる恋の話

焔 はる

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十五夜【壊れていく音】

15-1~side by 桜太~

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「時永桜太さん、ですよね?」





最近は仕事も落ち着いているし、椎娜の手も順調に治ってきている。

割と早く帰れるので、2人で食事をしてゆっくり映画を観たりいちゃいちゃしたり、岐津さんのお店に食事に行ったり、時には椎娜の言う「高級ホテル」でディナーをしてお泊りでいちゃいちゃして椎娜を可愛がったり、休日はドライブがてら遠出をしてみたり。

そんな、満たされながら落ち着いた日々に突然降ってきた爆弾。



「香月椎娜の・・・しぃちゃん・・・・・の、幼馴染で、今の彼氏。」



仕事帰り、車に乗り込む俺を呼び止めたのは、年齢は俺と同じくらいの若い男。

身長はナツと同じくらいか・・・細身で猫のような生意気な瞳。


何より、椎娜を「しぃちゃん」と呼ぶその男に、一瞬でオレは警戒を強めた。


この間、岐津さんとこの<桃弥くん>が椎娜のことをしぃちゃんて呼んでたみたいだけど、こいつも・・・?


「・・・君は?」


俺は開きかけたドアを閉め、男に向かい合った。



「・・・失礼しました。僕はしぃちゃんと以前お付き合いしていた水無瀬ライと申します。」


自信ありげ、意味ありげに口元に笑みを浮かべる。

しかし、目元は笑っていない。



「・・・何が目的?」



「目的なんてそんな・・・1つしかないですよ、しぃちゃんを返してほしいなって。」



「・・・お前、何言ってんだ?」




ったく・・・なんだってこう・・・椎娜の周りは黒木といいこいつといい、椎娜を所有物扱いする男ばっかりなんだよ・・・。


胸の中で溜息を吐いて、俺はその男、水無瀬ライを見据える。


「時永さんて、しぃちゃんの事どれだけ知ってます?たとえば・・・手首の傷痕、とか・・・」


「!」


口元に指を当てて、試すように、下から舐めるように水無瀬は俺を見上げた。
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