徒然なる恋の話

焔 はる

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十二夜【時を超える花言葉】

12-19

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「ねぇ桜太、桜太は信じる?広瀬さんの話・・・」

賑やかだった取材から、2人だけの静かな車内。

少しの戸惑いと、本当にそうなのか・・・という不安、俺の反応を伺う椎娜が信号待ちのタイミングで口を開いた。

「・・・信じるって・・・言えるほど、俺はあの人を知らないし、でも、信じない、嘘だよあんなの、って言いきれる程的外れな事を言ってたわけじゃない・・・。過去の事はわからないけど、俺の傷跡とか2人の年齢、黒木の事とか・・・「なんでわかるの?」っていうのはあった。椎娜は?どうだった?」

「私は・・・そうだったらいいな、って思った・・・」

「当たってるかどうかじゃなくて?」

「うん。前世なんて私はわからないし、事実か作り話かもわからない話を「嘘か本当か」ってする議論は無駄だと思う。だから、「そうだったらいいな」って思う。その時に、桜太が死んじゃって、私は父親を殺して自分も死を選んで、それでも今こうして桜太といられるなら、それは・・・嬉しい事だと思うから。それに、白い彼岸花の話は、素敵だと思った。」


「あぁ・・・確かに。”また逢う日を楽しみに”、”思うはあなたひとり”って花言葉な。」


知り得ない事があったのだとしても、今椎娜といられるなら、俺はそれが一番嬉しい。


広瀬さんの話が嘘でも本物でも、2つの言葉の先にある未来、今ここにある2人のカタチが本物で、”事実”で”真実”。


きっとそれだけだ。


知らない過去より、他人の言葉より、何よりも信じられるのは、今隣に椎娜がいる、ただその現実。
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