徒然なる恋の話

十夜【それは記憶と結びつくから。】

10-11

「･･････本気で思う訳ない･･･幼馴染の私とわざわざ付き合って浮気するなら、付き合わないで好きに遊んでる方がメリットあるでしょ？」


「･･･確かに。」


「私と付き合って浮気するメリットないじゃん･･･それに･･･桜太、私の事大好きだもん･･･」


「･･････嬉しいけど、ハッキリ言われると恥ずかしい･･･」


「好きって、わかったもん･･･」


ぐりぐりと俺の胸に頭を寄せて、


「･･･桜太だけは信じてみる･･･間違ってても、私の見る目がなかったって事で･･･」


「責任重大じゃん。見る目がなかったなんて、失望させないから･･･図々しく彼女でいてよ。」


頭を抱いてキスを落とす。

この温もりを失うことのないように、傷つけることのないように。


「･･･あ･･･」

「ん･･･？」

「･･･桃弥くんにね･･･」

「あぁ、柊誠さんの息子さんの？」

「うん、４歳の桃弥くんにね･･･僕の奥さんになる、ってプロポーズされた。」

「･･････ふぅん･･････だめでしょ。俺のだし。悪い虫とは言わない、岐津家の子だし、でも、しぃちゃん、俺のだし、婚約者だし、俺のだから。」

「･･･(笑)きっと、２０年後には忘れちゃうよ、桃弥くんも･･･」

「い～や、わかんないよ。男って、そういうの案外忘れないもんだから。」

「･･･桜太は？初恋･･･」


あ･･･こりゃぁ･･････墓穴を掘ったんじゃないか･･･？

馬鹿、俺･･･


「桜太の初恋は？まだ覚えてたりする･･･？」

「･･････」

「･･･お～い、桜太く～ん･･･？」

「･･････よ。」

「？？」



「･･･････････････椎娜、だよ。」




引っ越して、初めて挨拶しに行った時。

幼稚園児の俺の胸に小さく宿った初恋の火は、椎娜が灯したものだ。