徒然なる恋の話

十夜【それは記憶と結びつくから。】

10-3

「･･･とうや、くん･･･柊誠さんの、息子さん･･･」


･････････はぁ･･････？


え･･････？


「岐津桃弥くん･･･４歳」


「･･････ほんとに？」


「うん」


･･････俺、って･･･


みっ･･････ともねぇ･･････


恥ずかしい、ものすごく、べらぼうに、恥ずかしい。


「･･･なんで？」


「･･････悪い虫、ついたのかと思って。」


･･･かっこわる･･･。


「･･･桃弥くんが、私のこと「しぃちゃん」て言うから、勘違いしちゃった。ごめんね･･･？」


「･･････ううん、勝手にヤキモチ焼いてテンパった･･････」


「･･･(笑)ヤキモチ、焼いたの？」


「彼女が寝言で他の男の名前呼んだらヤキモチくらい焼く。」


「わっ･･･もぉ･･･やだ、桜太臭い。」


羽交い絞めにして腕に抱き込んだら、あからさまに「臭い」と本気で嫌な顔をする。

普段俺もタバコ吸わないし、そんなに嫌か･･･


「桜太こそ、なんで今日そんなにタバコ臭いの･･･？それに、香水の臭いもする。･･････浮気･･････？」


「なんでだよ。仕事で会食してきただけ。」


「･･････今の桜太の臭い、やだ。シャワーしてきて･･･。」


腕を押しのけて、のそのそと距離を取り、自分の身体の臭いをクンクン嗅ぎ始める始末。

こんなに臭いに敏感だったかな･･･椎娜･･･


そんなに嫌なら仕方ない。


たらたらしていても「臭い臭い」言われるのなら、さっさとシャワーを浴びてから椎娜と戯れることにしよう。

それに･･･

･･････香水とタバコで何を勘違いしてんのか、本気か冗談かもわかり辛いし、面倒な事、小さな誤解から拗れそうな事は、早めに解決するに越した事はない。