徒然なる恋の話

十夜【それは記憶と結びつくから。】

10-2

「･･･しぃちゃん･･･ね･･･ただいま･･･」


お～い、お願い･･･起きて･･･？


「し～ちゃん･･･」



ところが、次の瞬間、眠くて気怠げな椎娜の口から名を呼ばれたのは･･･



「･･･なぁに･･･と、ぅやくん･･･」


･･･


･･････


････････････！！


だれだぁぁぁァァァァーーーーーーー！！！


どこのっ！どいつだ！！『とうや』って！！！あぁんンン！！？？


誰だァ！！！！！


「･･････ん･･････？あ･･････おぅた･･･」


そこでやっっっと目が覚めた、意識覚醒１０％未満な愛しい彼女。

可愛いお声で俺を呼ぶけど、結構気が気じゃないんだよね、違う男の名前を寝ながら呼ばれるなんて。


「･･････ねぇ･･････とうや、って誰･･･？椎娜･･･とうや、ってだれ？」


「･･････とうや･･･くん･･････？桜太･･････」


目をこすり、顔を覆って、どういう事？ってなってるけど･･･それは俺もだからね･･･


「ねぇ･･･椎娜･･･」


椎娜に覆い被さり、左手に手を絡めると、眠たさで温かい手にキュンとして･･･ってそうじゃなくて･･･！！いちいちキュンてすんな俺･･･！！


額をくっつけて、頬をすり寄せて･･･


「･･･やだ･･･」


！！


や･･･やだ、って･･･やだって･･･言われた･･･


なんで･･･？？半日の間に何があったんだよ！『とうや』ってやつと･･･！！


「桜太･･･香水･･･タバコの臭い･･･する･･･やだ･･･」


･･･なんだよ･･･臭いのことか･･･泣きそうになるくらい胸が痛んだよ俺･･･


「椎娜･･･起きて･･･」


眠たがる椎娜を抱き起して、ベッドに座った椎娜と向かい合う。


「･･･おかえり、桜太･･･ちょっとだけ寝ようと思ったらめちゃくちゃ寝ちゃった･･･」


「ううん、それはいいよ全然、それより、『とうや』って誰？」


寝ちゃったなんてそんなの全っ然大した事じゃない。


そんな事よりも･･･！！


余裕なくて恥ずかしいくらい、『とうや』ってやつがどこのどいつなのかをハッキリさせないと気が済まない･･･！！