徒然なる恋の話

焔 はる

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九夜【真昼のぬくもり】

9-22

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「つよいの?!ねっ、つよいのっ??」

キラキラ、キラキラした瞳。

鼻息荒く、足に抱き着く子供の温さ。

「・・・桃弥、おいで。」

柊誠さんに抱き上げられて、残念そうに桃弥くんは私から離れた。

「申し訳ない、本当に落ち着きがなくて・・・。」

「いえ、大丈夫です・・・私、本当に、子供と触れ合うことがなく生きてきたので、多少驚いてはいますが・・・」

「一人っ子?」

「はい」

詳細なんて話す必要もないので、当たり障りなく、YESの答えを返した。

「そっか・・・うちは息子があと2人、こいつの上にいるんだけど、桃弥が一番落ち着きなくて、何にでも興味津々で、見とかないとすぐ迷子になるんだ。」

「・・・ねぇ・・・それ・・・つよいの・・・?」

柊誠さんの腕の中から、まだ私の右手を見つめている桃弥くん。

「強くないよ、さわる?」

「えッい、いいのっ??!」

目を輝かせる桃弥くん。

「いいよ。でもね、これは強いんじゃなくて、怪我をして痛いの、優しくしてくれる?」

私と目を合わせて、喜んで輝いた瞳が一瞬揺れる。

「・・・いたいの?」

「叩いたり、強くしなければ大丈夫。そっとさわれるかな?」

不安そうに揺れる瞳に、ゆっくり問いかける。

桃弥くんは柊誠さんを見上げ、自分で決めてもいいのか、父親の表情を伺っている。

「・・・桃弥、どうする・・・?約束、できるか?」

「・・・・・・できる」

頷いて、柊誠さんの腕の中から降りた桃弥くん。

しゃがんで目線を合わせ、包帯を巻いて固定してある腕を桃弥くんの前に差し出した。

パンチもミサイルも出ない、腕が伸びたり飛んだり外れたりもしない。

生身の身体が怪我をしたらこうなる事もあること。

カッコよくなんてない、ただ、痛みがあるだけ。

4歳の子がどう感じるのか、いつまで覚えているかなんてわからない。

それでもこうして恐る恐る指先で触れる、まだ4歳でしかないこの子の中には興味を持ったここから、何かが生まれ、残るはず。



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