徒然なる恋の話

焔 はる

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八夜【決別は未来への決意】

8-40~side by 桜太~

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「岐津さんのお店でバイトしてる時の桜太・・・見てみたかったな」

ドライブ中、ずっと緊張している椎娜が発した一言で、俺はあることを思いつき、明日から必要そうな日用品、食料品、飲み物等を買い込んで、家に帰ろうと提案した。

荷物を置いて、リビングに椎娜を待たせ、あの時・・・の服装に近い物を選んで着替えて、ワックスで前髪を上げてセットする。

「・・・まぁ、こんなもんか・・・」

白いワイシャツに黒のスラックスとベスト。

ソムリエ風のロング丈のサロンは無いから仕方ないとして、これで多少雰囲気は出るだろう。

素直に言ってくれない椎娜に、ちょっと仕返しと、おもてなしの戯れ。



「・・・・・・え、ど、う・・・した、の・・・」



見たことない表情で固まり、ガン見したのち挙動不審もいいところの椎娜。

右手はガッチリ固定されて使えないし動かせないのに、バタバタしだして顔を覆う。

あれ・・・?

スーツ好きな椎娜だし、せっかくなら自宅でBARスタイルで飲むのもいいかなと思ったんだけどな。

何かに反応しているのはわかるけど、俺と目も合わせずに顔を背けて、気に入ったのか、気に入らないのか反応が不審すぎる。

ぶつけたり転んでも困ると、椎娜の手を引いてカウンターチェアに促して、俺も右隣に腰掛けた。

バイトの時は前髪を上げていたから今日もそうしたら、おデコが可愛いとか言い出すし、それも目も合わせずに・・・。

触れた指先は緊張してるのか冷たくて、何か言いたいことがあると伝わるのに、椎娜は口にしない。

「そっかぁ・・・あんまり好みじゃなかったか・・・残念・・・」

シュンとして、残念を装えば、罠に引っかかって釣られるのはわかっている・・・。


「っ・・・!ちがっ」


ほらね。


素直に言葉にしないのに、瞳も態度も、伝えたいことは別にあることをありありと伝えている。

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