徒然なる恋の話

焔 はる

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八夜【決別は未来への決意】

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「椎娜をもてなそうと思ってさ」


いつも下ろしている前髪をワックスで上げて、白いワイシャツに、黒のスラックスと黒のベスト。

ワイシャツの袖を捲り、引き締まった腕が覗く。


さすがにエプロンまではないから、と笑うけど、エプロンまで身に着けた完全体をここで1人で見るのは心臓がもたない・・・しかもそれは、岐津さんがお店で身に着けていたような、丈の長いソムリエエプロンらしい・・・


・・・全裸すら見たことがあるのに・・・

腕を見て鼻血が出そうになるなんて、私・・・制服フェチだったのかな・・・

これは・・・反則・・・ズルい・・・卑怯だと思う・・・

・・・・・・カッコよくて死にそうだったのに、こんなの・・・心臓が爆発する・・・・・・


「・・・・・・椎娜?なに?見惚れた?」


愉しそうに笑って私に近づき手を引いて、カウンターチェアに促し、自分も隣の椅子に腰掛け、右肘をカウンターに着き、身体は私を向いて、膝がぶつからないように開いた桜太の足の間、私の左手を握って指先を弄ぶ。


「・・・岐津さんのところでバイトしてる時、そんな感じだったの?」

「うん、こんな感じ。似合う?」

「・・・・・・」

「あれ、そうでもなかった?椎娜スーツ好きだし、これも好きかなって思ったんだけど・・・」


似合う似合わないとかじゃなくて・・・

好きとか嫌いとか・・・そうじゃなくて・・・


「・・・おデコ・・・出てる・・・」

「あぁ、前髪は上げてたな。その方がサマになるから。」

「・・・かわいい・・・」

「えッ・・・かわいい、かぁ・・・」

「おデコあんまり見ないからかわいい・・・」

「・・・あんまり額ばっかり見ないでほしいんだけど・・・」

桜太は予想外だったのか、少しだけ恥ずかしそうに手で額を隠してしまう。

いつも前髪で隠れている額が、前髪をセットして上げたことにより見えているのが新鮮で、可愛いのもの本当・・・。

けれど、今でこのカッコよさなら、当時私が知らないこの姿での仕事中はモテたんだろうな、と一瞬で考えてしまい、素直に『かっこいい』と言えなくなってしまった。


・・・そう、単なる勝手な嫉妬心。

・・・・・・しかも、めんどくさい事に『過去』に対して。


「そっかぁ・・・あんまり好みじゃなかったか・・・残念・・・」

「っ・・・!ちがっ」

「ん?」


・・・あ・・・やられた・・・


『え?なになに?何が違うの??」』と、期待いっぱいの瞳に捕われる。

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