徒然なる恋の話

七夜【大切なもの、守りたいもの】

7-78

「ねぇ椎娜･･･左手貸して･･･」


「･･･？」


重ねて絡めて、握り合って、ここにいること、俺の腕の中にいることを確かめる。


「･･･ここに、いつか、めちゃくちゃ綺麗な指輪を贈るから･･･」


左手の薬指、今はガランとして何もないその場所にいつか、『俺の』っていう、消えない証を贈るから。


「･･･私は何をあげたら喜んでくれる･･･？」


「･･･何も。死ぬまでずっと、俺といてくれたらそれだけでいいよ。あ･･･それって、椎娜をほしいってことだな･･･」


一番シンプルに貪欲な欲望。


好きな女の一生が欲しい。


恋人も、妻としても、いいけど、生涯の伴侶として一番傍にいてほしい。


「ねぇ、椎娜･･････右手の理由、教えてくれる･･････？」


「！･･････」


「･･･もう、解放されていいんだ。今、椎娜といるのも、これから椎娜といるのも、あいつじゃない、俺だよ。」


「･･･桜太･･･」


「･･･あの頃は、何も知らなくて、知ろうともしなくて、知らないうちに知らないところで椎娜が傷ついてて、もうそんなのは嫌なんだよ。もう、椎娜が傷つかないように、痛い思いも苦しい思いもしなくていいように、一緒に抱えていきたい･･･だから、教えてほしい･･･何があったのか。」


･･･椎娜が言葉にしてくれるのか、また拒絶されないか不安だった。


でも、うやむやにして、隠して閉じ込めて、そこから逃げるだけじゃ、それこそ腫れ物に触れるようにしてるままじゃ、何も変わらない。


全部を覚えているわけじゃないけど、昨日、ナツがした椎娜のモノマネ？の言葉が本当なら、前に進むための変化が椎娜の中であったのかもしれない。


それに賭けてみたかった。