徒然なる恋の話

焔 はる

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七夜【大切なもの、守りたいもの】

7-42

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「・・・椎娜・・・」

しゃがみ込んで、ただ嗚咽しか出てこない私の肩に桜太の手が触れる。

大きくて骨張った手・・・

男の人にしては指が細くて、でも節の硬そうな感じはしっかり男の人で、短く切り揃えられた爪にいつだったか「深爪じゃない?痛くないの?」となんとなく零したら、「それ、計算?それとも天然?」と笑われた。

「・・・おうた・・・」

拒絶したのに、

「・・・だき、しめて、ほしぃ・・・」

「・・・ん・・・」

顔を覆ったまま、絞り出した言葉は、嗚咽なんかじゃなく、泣きじゃくるように大泣き・・・。

気配で桜太も床に座ったのがわかるほど、近い距離に存在を感じた。

抱き寄せられて、持ち上げられて、胡坐をかいた足の上に乗せられていると気づいて、その腕は怒ってなんかいなくて、いつもと同じ、今日の出来事が起こる前と変わらずに、私を思ってくれているのが伝わってくる。

「・・・しぃな・・・身体、熱いね・・・熱あるよ、やっぱり・・・。」

抱きかかえるように抱きしめる桜太の胸に顔の左側をくっつけて、徐々に身体の力が抜けていく。

・・・熱・・・そっか・・・

・・・・・・熱・・・出るかも、って・・・あの、おじぃちゃん先生言ってたな・・・・・・

サモエドみたいな立派な白髪に、サンタクロースみたいな白髭を蓄えた陽気なおじいちゃん先生は、あっけらかんと「今日熱出るかもしれんから、薬飲んで大人しく、激しい夜の運動も駄目ね」と言っていて、苦笑いをする私の後ろで、そんなセクハラは完全にスルーの岐津さんとナツさんだった。


前髪をよけて額を覆う手は冷たくて、訳が分からないほど身体の中を渦巻いていた怒りや不安、焦り、恐怖が少しずつ治まっていく気がした。

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