徒然なる恋の話

七夜【大切なもの、守りたいもの】

7-41

･･･

答えは出てるのに･･･

抱きしめて欲しいのも、触れて欲しいのも、黒木にさわられた感覚を消せるのも、消して欲しいのも、桜太だけなのに、どうして･･･

どうしても、腕の中に飛び込めない･･･

溜め息を吐いた顔を見るのが怖い･･･

怖くて･･･ぐちゃぐちゃで･･･めちゃくちゃで･･･頭の中も、胃の中もぐるぐるする･･･


｢･･･しぃちゃんはどうしたいの？｣


｢･･････歯磨き、したい･･･｣


｢じゃあ、歯磨きしよ。｣


目を合わせず洗面所に行き歯を磨く時も、壁に寄りかかって腕を組み、桜太はジッと見ている。

居心地が悪いまま、歯を磨き終わり、片手で洗顔もした。

｢他には？｣

｢シャワー浴びたい･･･｣

｢今日はだめ。どうしても気持ち悪いなら身体拭くだけにして。触られたくないなら、お湯とタオル用意するから。｣

私が頷くと、洗面器にお湯を溜めてタオルを浸して持ってきてくれた。

絞れないのも見越して、絞ってからタオルを渡してくれる。

｢･･･見られててするのやだ･･･｣

｢わかった。反対向いてるから、タオル冷えてきたり、洗いたい時言って。｣

桜太はクルッと背中を向けた。

何度も見られてるし、今更なのに、仕事帰りでスーツ姿の桜太と、ブラとパンツだけ、しかも手は骨折、泣いて顔もボロボロ･･･

･･･身体を拭く姿なんて見られたくなかった。


｢･･･っ･･･ふ･･･ぅ･･･｣


･･･なに、やってるんだろう･･･


情けなさすぎて涙が出た。

顔を覆った温かいタオルに涙が沁み込んでいく。


･･･こんなはずじゃなかったのに･･･