徒然なる恋の話

焔 はる

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七夜【大切なもの、守りたいもの】

7-23~side by 椎娜~

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桜太から電話が来て、やはりどうしても今は抜けられず待たせすぎてしまうから、岐津さんが来てくれると告げられた。

顔見知りになったとしても、わざわざなんで岐津さんが来てくれるんだろうとか、あの腕時計の謎とか、桜太の慌てようとか・・・頭の中で、繋がるような、繋がらないような・・・違和感が消えない。


・・・何か、起こる事を予想できる、何かを、桜太も岐津さんも、知っていた・・・??


桜太があんなに心配を表に出したり、腕時計を預ける際に「武器になるから」とか「何かあったら連絡して」とか・・・私はてっきり、寂しくて私が泣くからだと思っていたけど、本当は、本当に本当の理由は別のところにあったんじゃないのだろうか・・・。

そう考えると、バラバラだったピースが音を立ててハマっていくように、辻褄つじつまが合っていく。


桜太と岐津さんが、黒木が私に近づいてくる可能性があると考えるきっかけがあったはず・・・。


無意識に手首を握りしめる。


・・・何を・・・何かを、桜太が知ってしまったはず・・・。


いやだ・・・やだ・・・


はぁはぁと呼吸が乱れて浅くなる。

嫌われたくない・・・これ以上、汚い私の過去を桜太にだけは知られたくない・・・っ


ポジティブに考えられる要素は1つもなくて、頭の中を過去の映像が駆け巡る。


スマホが震え、手に取ると、表示されていたのは岐津さんの名前。

「・・・はい・・・」

『大丈夫か?待たせてごめんな、今その建物の中に入った。その階のトイレ前まで行くから出てこれるか?』

「わかりました、今から出ます」

電話を切り、忘れ物がないか確認してトイレの個室を出た。

「・・・はぁ・・・」

鏡に映る自分の顔は死人のそれよりも真っ青で、酷すぎる顔をしている。

メイク道具もないし、まぁ・・・あっても化粧直しなんてする時間も余裕もないからいいけど・・・最近泣いてばかりいるな・・・

女子トイレからショッピングフロアに数十分ぶりに出て、岐津さんの到着を待った。


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