徒然なる恋の話

焔 はる

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七夜【大切なもの、守りたいもの】

7-18~side by 桜太~

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椎娜に渡した腕時計。

からかったのではなく、あれは音声を拾うと指定したスマホに文字としてメッセージ化され、届くように細工をしたもの。

俺がいつもしている腕時計と同じものを用意して、それを岐津さんの部下である人がそのように細工を加えて、今朝椎娜を家に送る時間に間に合うように、郵便受けに入れて行ってくれたのだ。

慌てすぎて確認する前に電話をしてしまったけど、GPSもついているから本当は、今椎娜がどこにいるかも分かる。

それもこれも、今回の厄介な件に椎娜が絡んでいて、狙われているのも椎娜だから。

・・・弁明をするなら、いくら俺でも、いくら俺が椎娜を好きでも、四六時中監視したり、行動を把握していたいわけではないし、こんな小細工したもの、普段は渡す訳がない。

腕時計が拾った音声をメッセージに変換して通知するのは、俺と岐津さんのスマホ。

俺に届いた椎娜からの「助けて」の言葉。

腕時計を渡しておいて正解だった。

何かあっても、遠慮して電話をしてこないかもしれないと思ったし、それが、自分に恐怖を与えた過去の男が絡んでるなら尚の事、俺には連絡し辛いだろう。

だから、冗談ぽく聞こえるようにして、腕時計は声を拾うかもしれないというニュアンスで伝えておいたのだ。

腕時計に助けを請うくらいなら、もっっっと図々しく電話をしてくればいいのにと歯がゆくて仕方ない。

椎娜との電話を切った直後、岐津さんから電話が入った。

『おい、連絡取れたか?』

「はい、直接接触・・・未遂な感じですがあって、今は逃げて〇〇の商業施設のトイレにいるみたいです。」

『・・・直接か・・・結構マズイな・・・お前動けんのか?』

「2時間くらいすればなんとか1時間くらいは空きそうなんですが・・・すぐは正直厳しくて・・・」

会話をしながら、タイミングがなぜこんなに被るのか、俺は頭を抱える。

椎娜に、迎えに行くなんて偉そうに言ったのに、ギチギチのスケジュールには、30分後からどうしても外せない商談が入っていた。

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