徒然なる恋の話

七夜【大切なもの、守りたいもの】

7-14

ゴミの日は明日。

今夜一晩だけ、積み上がったゴミ袋と過ごし、明日からはスペースも広くなった部屋で過ごす事になる。

空腹を覚えて、何もない冷蔵庫からチクワとマヨネーズを取り出した。

「･･･美味しいけど･･･これじゃ･･･いけない･･･よね･･･」

５本入りのチクワ。

美味しいけど、食事の主食がこれではいけない、とやっと気づいた･･･２７歳。

長年生理不順なのは、食生活の乱れも原因の１つの要素かもしれない。

･･･桜太と、生でえっちを致した結果もまだわからないし、自分の体調にもう少し気を遣おうかと思い始めた。

食べ終わったら近所のスーパーに食材の買い出しにでも行こうか。

日暮れは早くなっている。

私は早速用意をして買い物に出かける事にした。



マンションの外に出ると、少し肌寒くなった風に肩を竦める。

日は落ち始め、料理をしようと意気込んでいたのに、もうめんどくさく感じて「買ってもいいかな･･･」と思い始めている。

とりあえず、私でも作れそうな、材料はなんとなく覚えている料理に挑戦してみよう。

食べたことない料理なんて初心者には無理だし、まずは、食べたことのあるものからだ。

うん、うん。

まずは１歩が大事と自分に言い聞かせる。

岐津さんと再会した喫茶店がある商店街までは徒歩で向かう。

夕方の買い物客で賑わう時間までは少し早いし、そんなに混みあってはいないだろう。

道中すれ違うのも、学校帰りの制服の中高生や、犬の散歩中の見かけたことのある人が大半。

そんな中で、目深にフードを被り顔は見えないのに、上下黒の服装の背格好から見て性別は男であろうという人物が、独特な空気感で異様な雰囲気を纏う。

顔が見えないのに、ドクンと大きな音を立てる心臓･･･

感じたことのある嫌な緊張感と恐怖に喉が引き攣り、呼吸が乱れる。

公園の入り口の車両除けのポールに腰かけ、身体の前で腕を組んでいる。

その腕を解いた時。

ジャラッと金属の音が往来に響き、鈍く輝いたゴツいシルバーのブレスレット･･･。