徒然なる恋の話

六夜【求めよ、さらば救われん。】

6-18

目にかかる髪を指先でどけると、閉ざされた瞳に釘付けになる。

･･･少し腫れてる･･･

目尻も若干赤い･･･

そっと･･･頬の曲線に沿うように右手の手のひらで包む。


･･･椎娜だ･･･


愛しくて心臓が痛い･･･。


｢･･･？｣


｢･･･おはよ･･･｣


頬を撫でる手の下で、ぴくりとした瞼が、眩しそうに震えながら少しだけ開く。


｢･･････？｣

｢･･･しぃちゃん･･･ただいま｣

｢･･････おう、た･･･？｣

｢うん･･･｣

｢･･･ゆめ･･･？｣

｢ふっ･･･夢だったら･･･？｣

｢･･････やだ･･････｣

｢椎娜･･･夢じゃないから泣かないで･･･｣

起き上がる椎娜に手を伸ばし支えて身体を起こす。

｢･･･桜太･･･｣

重力に忠実に流れる涙を指先で拭い、まだぼんやりとした椎娜の反応を待つ。

｢･･･ごめん･･･｣

｢？どうして？｣

｢･･･１０日間･･･もたなかった･･･｣

ボロボロと拭いきれない涙が頬を伝い、部屋着のスウェットにシミを作り、顎先から喉へと流れた涙を、顔を寄せて唇へと移す。

｢･･･そんなの･･･気にしないでよ。忙しくなるなんて俺の都合、椎娜は無理しなくていいし、我慢しなくていい。謝る必要なんてない。来てくれて、俺は嬉しかったよ。｣

｢･･･桜太･･･｣

｢ん･･･？｣

｢･･･さわっても･･･いい･･･？｣

｢･･･いいよ｣

触れていた手を引かれ、膝を着いて１歩分ソファーに近寄る。

横座りした椎娜に見下ろされる不思議な位置関係。