徒然なる恋の話

焔 はる

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五夜【甘い戯れと赦し】

5-54

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枕の下から取り出した、銀色にキラっと輝いたソレ。


桜太は、国民的な青い猫型ロボットが秘密道具を紹介する時のようにリズムと節をつけて、


「お~たの部屋の鍵ぃ~♪」


「・・・・・・鍵・・・???」


「そ。これを椎娜にあげよう。」


手のひらに握らされた銀色のそれは、どこからどう見ても鍵の形をしている。


「会えない時、寂しい時、いつでも出入り自由権。俺がいない時に会社の奴らが来る事は無いし、会えない期間椎娜が休みの日だってあるよね、だから、来たい時に来て。寂しいのを自分でどうにかしようとかしなくていいから我慢しないで。」


遅く帰ってきて、椎娜がいたらサプライズみたいで嬉しいから。


そう付け加えて後頭部を抱き寄せる。


「・・・甘やかしすぎだよ・・・」


「そうかな・・・俺がしたいんだからいいんじゃない?だから、声が聴きたいとか、我慢しないで着信入れてて?遅くなっても必ず連絡するから。」 


・・・重荷になりたくないのに、めんどくさい『寂しがり』が発動されている今は『嬉しい』と『申し訳ない』がひしめき合う。


「・・・しーいな!そんな顔すんな。俺がいいって言ってんだから、図々しく彼女・・してろ。」

私の頬を挟んで左右から押し潰し、ブサイクに尖った唇にキスが落ちる。

「・・・ありがとう・・・。」

「ん。あと、体調は気にしてて。なんか変だったら必ず言う事。」

あ・・・

言われるまで頭から飛んでいた。

次の生理予定を頭に浮かべながら、元々不順気味なので予測は大幅にズレることも多く、気をつけておかないと・・・と胸に留める。


しばらくはこうやって触れられないかもしれない、と改めて実感し始めて、寂しさを紛らわすように、桜太の胸にグリグリと擦り寄った。


「あと・・・」

「んんっ・・・」


上向かせてガラ空きになった首筋から下がった左の鎖骨下に桜太の唇が触れ、僅かな痛みと吸われる感覚。


「ん・・・、消えるまでには会えるようにするから。」

寂しくなったら思い出して。

そう言って満足そうに顔を上げた桜太が、その場所を親指でなぞった。
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