徒然なる恋の話

焔 はる

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五夜【甘い戯れと赦し】

5-31

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腹が満たされる頃、着いたのは海辺の駐車場。

降りようとした椎娜にジャケットを手渡して、「暑いのに・・・」と少し不満そうにするから、首元を指でトン、と突けば、意味を理解して口をつぐんだ。

赤くなった顔には気づかないふりをして、外に出れば、強い風はやはり夏とは違って少し肌に刺さる。

それを気にもせず、楽しそうに砂浜へ向かう椎娜の後を追った。

「うわっブーツ歩き、にくっ・・・」

砂浜に埋まり、歩きにくいと苦戦する椎娜。

「脱いじゃえば??」

「え~・・・タオルないしなぁ・・・」

「タオルないけど、ウェットティッシュとかあるから拭けるよ?」

「・・・車、砂っぽくならない?」

「海に来た時点で想定内でしょ、気にすんなよ」

笑って言えば嬉しそうに、ブーツと靴下を脱いで砂の感触を確かめている。

放たれた犬のように目を輝かせて波打ち際まで走るから、転ばないか心配になるほど。

「海久しぶり・・・」

寄せては引く、大きく寄せては返す。

濡れた痕に足を乗せ、触れるか触れないかを楽しみながら、足首まで波を被り、「冷たいっ濡れた~!」と笑う。


・・・眩しい・・・。


それは、海と空2つの青の美しさが理由だけではなく、付き合う前には見たことがない、純粋に楽しそうにしている椎娜の姿。


この時間を過ごしている事、この笑顔を向けられる事に何故か無性に泣きたくなった。


・・・幸せが強すぎて涙腺が緩い・・・


目の奥、鼻の奥がツン・・・と痛み、サングラスをして来てよかった、と2回目の感謝。
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