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五夜【甘い戯れと赦し】
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腹が満たされる頃、着いたのは海辺の駐車場。
降りようとした椎娜にジャケットを手渡して、「暑いのに・・・」と少し不満そうにするから、首元を指でトン、と突けば、意味を理解して口を噤んだ。
赤くなった顔には気づかないふりをして、外に出れば、強い風はやはり夏とは違って少し肌に刺さる。
それを気にもせず、楽しそうに砂浜へ向かう椎娜の後を追った。
「うわっブーツ歩き、にくっ・・・」
砂浜に埋まり、歩きにくいと苦戦する椎娜。
「脱いじゃえば??」
「え~・・・タオルないしなぁ・・・」
「タオルないけど、ウェットティッシュとかあるから拭けるよ?」
「・・・車、砂っぽくならない?」
「海に来た時点で想定内でしょ、気にすんなよ」
笑って言えば嬉しそうに、ブーツと靴下を脱いで砂の感触を確かめている。
放たれた犬のように目を輝かせて波打ち際まで走るから、転ばないか心配になるほど。
「海久しぶり・・・」
寄せては引く、大きく寄せては返す。
濡れた痕に足を乗せ、触れるか触れないかを楽しみながら、足首まで波を被り、「冷たいっ濡れた~!」と笑う。
・・・眩しい・・・。
それは、海と空2つの青の美しさが理由だけではなく、付き合う前には見たことがない、純粋に楽しそうにしている椎娜の姿。
この時間を過ごしている事、この笑顔を向けられる事に何故か無性に泣きたくなった。
・・・幸せが強すぎて涙腺が緩い・・・
目の奥、鼻の奥がツン・・・と痛み、サングラスをして来てよかった、と2回目の感謝。
降りようとした椎娜にジャケットを手渡して、「暑いのに・・・」と少し不満そうにするから、首元を指でトン、と突けば、意味を理解して口を噤んだ。
赤くなった顔には気づかないふりをして、外に出れば、強い風はやはり夏とは違って少し肌に刺さる。
それを気にもせず、楽しそうに砂浜へ向かう椎娜の後を追った。
「うわっブーツ歩き、にくっ・・・」
砂浜に埋まり、歩きにくいと苦戦する椎娜。
「脱いじゃえば??」
「え~・・・タオルないしなぁ・・・」
「タオルないけど、ウェットティッシュとかあるから拭けるよ?」
「・・・車、砂っぽくならない?」
「海に来た時点で想定内でしょ、気にすんなよ」
笑って言えば嬉しそうに、ブーツと靴下を脱いで砂の感触を確かめている。
放たれた犬のように目を輝かせて波打ち際まで走るから、転ばないか心配になるほど。
「海久しぶり・・・」
寄せては引く、大きく寄せては返す。
濡れた痕に足を乗せ、触れるか触れないかを楽しみながら、足首まで波を被り、「冷たいっ濡れた~!」と笑う。
・・・眩しい・・・。
それは、海と空2つの青の美しさが理由だけではなく、付き合う前には見たことがない、純粋に楽しそうにしている椎娜の姿。
この時間を過ごしている事、この笑顔を向けられる事に何故か無性に泣きたくなった。
・・・幸せが強すぎて涙腺が緩い・・・
目の奥、鼻の奥がツン・・・と痛み、サングラスをして来てよかった、と2回目の感謝。
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