徒然なる恋の話

焔 はる

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五夜【甘い戯れと赦し】

5-30

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カツサンドの最後のひと口分を俺に食べられたのはもういいようで、助手席でちくわパンを頬張る。

けれど、

「・・・なに?どうしたの」

ちくわパンと俺を見比べて、なんとも言えない顔をしてる。

面白すぎるけど、笑ったらいけない気がして。

「・・・食べる?」

「えっ・・・どうしたの、椎娜ちくわパン好きじゃん・・・好きなちくわパンじゃなかった?」

「違うよ!・・・美味しいから、桜太も食べるかなって・・・」

・・・もうさぁ・・・そんっなに食べたそうに聞いてくれるのさぁ・・・食べたいのほんとめちゃくちゃ分かるよ・・・それなのに、神を分け与えようとしてくれるんだね・・・涙出そう・・・

「ありがとう、いいよ、椎娜食べな」

信号が赤になり、ゆっくりと車が止まる。

アイスコーヒーを手に、ストローを咥えると、口の中に心地良い苦味が広がった。

「・・・でも・・・」

まだ葛藤している椎娜。

「・・・ちくわパン、俺が食べてもいいの?」

「・・・うん。あ、でも全部じゃないよ!残しといてね!」

・・・めちゃくちゃ必死・・・(笑)
 
ちくわパンを差し出してくる椎娜の手に触れ、パンと手を一緒に掴んだ。

椎娜の目が俺の動きを追い、見開かれる。

「っ・・・ぅ、んぅ・・・っ」

あ、という顔の椎娜。

俺はちくわパンにではなく、椎娜の唇を塞いだ。

「・・・全部食べるのはこっち。ごちそうさま。」

唇を離し、至近距離で笑えば、一瞬の後、椎娜の顔はみるみる赤くなる。

「~~~!!もぉっ・・・ずるぃ・・・」

神を握りしめ、ぷいっと窓の外に目を向け、動き出した景色を眺め始めた。

「・・・そういうの、サラッと出来るの・・・ずるい・・・ドキドキしすぎて心臓が早く死んじゃうよ・・・」


耳に届いたその呟きはずるい・・・俺の方が死んじゃうかもしれない・・・


握られたままのちくわパンと噛み締めて尖らせた唇、膨らんだ頬に愛しさが募った。

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