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五夜【甘い戯れと赦し】
5-25~side by 桜太~
しおりを挟むごめんね、私は穢い。
そう笑うから・・・
抉られたのか、貫かれたのか。
相手への怒りなのか、殺意なのか。
きっと全てが入り交じった感情に、謝る椎娜に、何で傷ついたのは椎娜なのに、椎娜が謝るんだ・・・何も変わってない、『綺麗なままだよ』と言葉にしたら、堰が決壊したように溢れた。
人のために、誰かを思って、ましてや付き合った彼女を思って泣いたことは過去にあるはずもなく、それも、こんなに痛みを伴うものなんて、取り返せない怒りを持って、グルグルと黒い感情が腹の底に溜まる。
好きな女の前で堪える間もなく溢れた涙が情けなくて、ほんとダサすぎるし、カッコつけたって締まらない・・・
そんな意味を持って言葉にすれば、
「カッコ悪くない・・・!じ、じぶ、んの・・・っため、に・・・泣い、て、くれる・・・人の、何がカッコ悪いの・・・!!?」
勢いよく立ち上がった椎娜は、泣きながら言葉を強めて、俺に手を握られたまま、眉間に皺を寄せ、唇を震わせて俺を見下ろしていた。
「・・・・・・椎娜・・・カッコよすぎるんだけど・・・・・・」
痛みを抱えても強い。
痛みを知っているから強い・・・。
俺は・・・馬鹿な俺はあの頃、椎娜がそんな痛みを抱えてることも知らずに、裏切られたような気に勝手になっていたのに・・・。
「・・・惚れるよ」
椎娜に手を引かれ立ち上がると、伸びてきた手が首の後ろに周り、強引に引き寄せられた。
「んっ・・・し、ッ・・・ぃ・・・な」
ぶつかった少しの痛みと血の味が広がり、唇が離れたかと思うと、視線を逸らさずに、
「・・・ずっと、惚れてて・・・惚れさせていて・・・。」
・・・やられた。
本当にもう・・・椎娜が最強・・・最上だよ・・・。
椎娜を抱き寄せ、額に手を当てて天を仰ぐ。
「は~~~・・・・・・彼女がカッコ良い・・・つらい・・・立つ瀬ねぇなぁ・・・俺・・・椎娜には敵わない・・・」
守ってやりたいだとか、そんなのを斜め上に飛び越えて、カッコ良すぎるよ・・・。
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