徒然なる恋の話

五夜【甘い戯れと赦し】

5-15

｢･･･なに？｣

桜太の胸に手を着いて、目線は珍しく見える桜太の旋毛つむじ。

好奇心に惹かれ、押してみたり、突っつきたくなるのをグッと堪えた。

敢えて、この甘い流れの中で、そういう切り口で話すのだとしたら、きちんと聞かなきゃいけない気がしたから。

｢･･･嘘、っていうのか･･･わからないけど、思い出したんだ･･･まだ俺が高校生だった時、椎娜ファミリーと俺の家族、仲が良いのにその仲にいたくなくて、･･･椎娜と顔を合わせるのがキツい時期があった･･･。｣


･･･うん、覚えてるよ･･･


･･････突然、私を避けるような行動を取るようになった桜太。


極力顔を合わせないように行動してるのが丸わかりで、原因もわからなくて、メールをしても返信は｢なんでもない｣とか、それでも返信があればまだいい方。

次第に桜太は学校をサボりがちになり、行動が予測できなくなった。

桜太の両親からは、あまり帰って来ず、親がいない昼間に家に帰ってきて、親が帰ってくる前にはまた出かけると聞いた。

友人からは、桜太を夜の街で見かけたと聞いたし、年上の女の先輩の家に入り浸ってる、それも、お相手は複数･･･そんな話が聞こえてきたり･･･。

突然、乱れ始めた高校生時代の桜太。

２家族で行く予定だった沖縄旅行も桜太だけ不参加で、父親２人は｢まぁ、男にはそういう時期もあるよ｣なんて言って、母親２人から白い目で見られていたっけ･･･。

その沖縄旅行で、桜太へのお土産に買ったのが、あの・・シーサー。


･･･まさか、今も持っていてくれてたなんて･･･


部下だという、人の手からシーサーを奪い返した焦った顔を思い出して思わず口元が緩んだけど、相変わらず胸に顔を寄せたままの桜太はそれには気づかずに言葉を継いだ。