徒然なる恋の話

五夜【甘い戯れと赦し】

5-13

ゆら･･･

身体の動きに合わせ、温かいお湯が揺らめく。

伸ばされた手、指先に触れるか、私のために寛くつろげられた腕の中に身体を収めるか、どちらが正しいんだろう、と一瞬で考えつかずに、手を出したり引っ込めたり、それをまた桜太に笑われた。

｢･･･正面？背中･･･？｣

｢･･･お好みのままに｣

小首を傾げ、好きなようにどうぞ、と微笑むから、降りかかる甘さに顔が熱くなる。

思考を逡巡させ、

｢･･･おじゃま、します･･･｣

｢くっ、ぷはっ･･･どうぞ｣

堪え切れずに噴き出した桜太の胸に背を預ける形で身体を寄せた。

静かな浴室に、無駄にうるさい心臓の音が響いてるような気がして尋常じゃない緊張がある。

｢ひゃっ･･･｣

｢ふは･･･心臓壊れそうなくらいドキドキしてるね｣

しかし、無防備な胸に迷いなく重ねられた桜太の手によって、それはバレてしまう。

｢やばいなぁ･･･めちゃくちゃ幸せ･･･幸せにのぼせそう･･･｣

洗い髪をまとめた首筋と肩に顔を埋め、口づけて顎が乗る感覚。

耳に触れる桜太の髪と、熱い呼吸がくすぐったくて、やはり緊張とキュゥっと胸が痛む苦しさ･･･。

胸を覆う手がそれ以上に進むことはなく、私を抱えるように、桜太は自分の両手を私の前で組んだ。

意図せずして、膝を抱えて手を組んだ私の手と比較出来る位置になり、腕も、手も何もかもが違う、『男と女』なんだな、と何度目かになる認識･･･

むず痒く、恥ずかしいような、身の置き場に困る感じ･･･。