徒然なる恋の話

焔 はる

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四夜【藍の深淵】

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「ほらもういいだろ・・・帰れよお前ら・・・ほんっと帰ってくれ!」

桜太は3人をまとめて玄関へと押しやる。

俺らはニヤニヤしながら眺め、

『え~・・・俺、シーサーちゃんともっと話したいのにぃ』

誠司が彼女をシーサーちゃん呼びにして桜太を煽るが、そんな事より、「もういいから帰ってくれ」と本気だ。

『まぁ、仕方ないですね。人の恋路を邪魔するとなんとやら、と言いますからね』

今日の所はおじゃま虫は退散しましょう、と告げ、誠司を引きずるように連行する。

『椎娜ちゃん、またね』

蓮は彼女に笑いかけて俺らは桜太の部屋を後にした。

『なぁ、桜太めっちゃマジだな』

マンションを出て3人並びながら、誠司が面白そうにはしゃいでいる。

『・・・バスタオル、何を隠したいか、見せたくないか、分かりすぎて逆に恥ずかしい』

蓮が堪えきれずに笑いを零した。

『それね・・・気づくよね、タオル姿からの・・・バスタオルはさ。』


『『透けちくび』』


俺と蓮の声が揃い、『え!!』と驚く誠司だけがわかっていなかった。

『え~~!!マジかよ!!今更気づくとめちゃくちゃえろくね・・・?』

『誠司顔やばい。キモイ。友人で上司の彼女で想像するの、マジキモイ。いつにも増してキモイ。まさか、童子わらしなの?誠司、下半身も童子なの??』

蓮が怒涛の言葉責め。
ドン引きの視線を向ける。

『なんだよ!お前らが言ったんだろ!てか蓮!キモイキモイ言うな!童子じゃねぇわ!って!!立派な大人だわ!!しかも下半身も!ってなんだよ!って!いってぇな!!』

いい大人が夜中の往来で騒ぐ迷惑さに、誠司の尻に膝蹴りを入れた。

『・・・誠司、うるさい。迷惑。』

『・・・う』

『まぁ、また会うかもしれないし、今日は桜太しゃちょうの面白いとこも見れたしよかったんじゃない?』

蓮に至っては、気に入ったのが本当に動物的な感覚な気がして、餌付けやらを始めそうな気がしている。

『なぁ、どうする?もう一軒行く?』

飲む気満々の誠司だが、『誠司の酔い方が酷くて面倒臭いから嫌だ』と蓮に一蹴された。  

飲みに行きたがる誠司は、酒が入ると普段の性質がなんなのか、と思うほど人が変わる。

誠司自身は知らないだろうが、付き合いのある会社やアパレル部門のおねぇ様方からは、
『榊さんて、シラフの時とか仕事中、黙っていれば<強面コワモテワイルド系イケメン>なのに、酒が入ると<残念なイケメン>よね。』と言われている。

・・・重ねて言うけど・・・誠司は知らないだろうが、指摘は的確で、聞いた時にはフォローも反論も浮かばなかった程で、だからあいつモテないんだな・・・と納得してしまった。


蓮が『お疲れ』と、笑顔を残して人混みに消え、拗ねる誠司を宥めてタクシーに乗せて、ポケットで鳴っているスマホを見ると、行きつけのBARのマスターからのお誘い。

気楽に飲める隠れ家のようなその店は、定期的に世界中の珍しい酒を入荷する。

今もその連絡で、<行きます>と返信して、俺はウキウキと店へと足を向けた。



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