徒然なる恋の話

焔 はる

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四夜【藍の深淵】

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この部屋にはかなり浮く小さなシーサーの置物も、彼女から昔貰った物だと桜太が言っていた。

だが、彼女はそれを知らなかったようで嬉しそうに微笑み、バレたくなかったのかキュッと口を結んだ。

・・・もしかすると、ここへ来たのも今日が初めてかもしれない。

『そっか~~シーサーちゃんか~そのシーサー、触るといつも怒るんだよな~桜太。』

と、まだ懲りない誠司は、桜太と彼女の周りをまるで野良犬のようにウロウロし、小柄な彼女の目線に合わせて腰を屈め、元々鋭い目を更に細めて見定める様に凝視している。

・・・はぁ・・・さすがに失礼すぎ。

距離感無いにも程がある。

『ふ~~~~~ん・・・ぐぇっ』

『誠司、不躾すぎ。失礼でしょ。』

誠司の首根っこを掴むように彼女から引き剥がし、仲間の非礼を詫びた。

『茅野暁月です。誠司は・・・ちょっと・・・だいぶ、人との距離感おかしいんで、すいません。』

戸惑いながらキョトンとした目の彼女と初めてしっかり目が合った。

・・・ずいぶん真っ直ぐに目を見る子だな・・・。

そう思っていると、

「・・・いえ・・・っひっ!!」

気配なく、背後に近付いた蓮に気づき、文字通り飛び退いた。

「蓮・・・椎娜で遊ぶな」

『ふふ、ごめんね。美澄蓮です。』

「椎娜・・・蓮はこんな甘顔ツラしてドSだから、気をつけて。」

一通り自己紹介が終わり、蓮に驚いて飛び退いたままの彼女は、ジリジリと距離を詰め、桜太の背後に半分隠れて俺たちの様子を伺う。

それは、物陰から警戒する猫のようで、誠司、蓮、俺も含め、3人の興味を引くには十分過ぎた。

何より、上司であり取締役社長で長年の付き合いのある桜太がずっと好きだった幼馴染、年上の彼女。

たぶん、桜太より3つ上なら俺と同い年の27歳。

『やばい・・・面白い』

考えている間に蓮がロックオンした。

蓮は面白い人間を見つけると、遊びたくなる性質タチ

新しいおもちゃを見つけた感覚でしか無いだろうけど、反応が面白いとちょっかいを出したくなるクセがある。

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