徒然なる恋の話

焔 はる

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四夜【藍の深淵】

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リビングに戻った俺と、背後から姿を見せた椎娜に、3人の視線が集中する。

「・・・紹介する、幼馴染で、彼女の香月椎娜さん。」

ポカーンと口を開けてマヌケ面になっていた誠司が、

『え、幼馴染の、って・・・え、え??』

明らかに思考が許容範囲を超えたらしく、目だけが俺と椎娜を忙しく行ったり来たりしている。

『・・・未成年じゃないなら問題ないな』

と呟くのは暁月。

「っか・・・香月椎娜です・・・」

『・・・声、いいね』

「・・・やめろ、いかがわしい反応すんな、蓮」

『冗談だよ・・・』

蓮のは冗談に聴こえねぇ・・・。

天然でタラシだからタチ悪すぎなんだよ蓮は・・・。

『あ、そうだ、あれじゃん、シーサーの子!!』

誠司が思い出して、リビングの窓辺に置いてある、小さなシーサーの置き物を手にして戻ってきた。

『これ、これくれた子だろ?』

「おい、気安くさわんな。それに優しく扱えよ」

「・・・桜太・・・そのシーサー・・・」

信じられない物を見たように、椎娜の目が見開かれる。

「・・・うん、高校生の時に椎娜がお土産としてくれたやつ・・・。」

このシーサーを飾ってるのは椎娜には言ったことないし、それをこんな流れでバラされてめちゃくちゃ気まずい・・・恥ずかしすぎる。

けれど椎娜は、嬉しそうに口元をキュッと結んだ。

誠司の手で転がされるシーサーを奪い返して俺は手のひらで包む。

そもそもガサツなんだよ・・・誠司は・・・

『そっか~~シーサーちゃんか~そのシーサー、触るといつも怒るんだよな~桜太。』

わかってんなら触るなよ・・・

俺がイラついてもペースを崩さない誠司は、周りをウロウロしながら、椎娜の目線に合わせて腰を屈め、元々鋭い目を更に細めて見定める様に凝視している。

『ふ~~~~~ん・・・ぐぇっ』

『誠司、不躾すぎ。失礼でしょ。』

暁月が誠司の首根っこを掴むように椎娜から引き剥がし、仲間の非礼を詫びる。

『茅野暁月です。誠司は・・・ちょっと・・・だいぶ、人との距離感おかしいんで、すいません。』

「・・・いえ・・・っひっ!!」

いつの間に来たのか、蓮が背後にいることに気づき、椎娜は文字通り飛び退いた。

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