徒然なる恋の話

四夜【藍の深淵】

4-20

お湯が溜まるまでには１０分程かかるので、何か飲むかな～と、冷蔵庫の中を探す。

｢待ってる間何か飲む？椎娜飲めそうなのは･･･お茶とかジンジャーエールとか･･･あ、ヤクルトあるよ？｣

甘いジュースとかは俺も椎娜も飲まないし、アルコールは後にするとして、今何か･･･と探した中で、無難なのはそのくらいか。

キッチンへそろり･･･と来た椎娜が遠慮がちに呼ぶ。


｢･･･あの･･･桜太･･･｣


｢ん？どうした？？｣


｢あのね･･･｣



･･･部屋着、忘れちゃった。



｢･･･え？もぉ～、しょうがないな、いいよ、俺の出してくるけど絶対デカいからなぁ、なんか着やすいのあったかな･･･｣

緊張したり、あれこれ考えながら準備をして忘れることもあるよな、と思い、貸すにしてもあんまりダボダボじゃひどいし、何がいいかなとクローゼットを探しに行く。


･･････ん？


いや、まさかな･･･


俺の頭に、１つの『可能性』が浮かぶ。


｢･･････椎娜･･･｣


｢･･･なに･･･？｣


｢･･･部屋着･･･俺の思い違い、かもしれないけど･･･｣


『あ･･･でも、俺のを着てるのもいいな･･･。』


それは、車の中でふと呟いた言葉。


クローゼットがある隣室への扉、ドアノブにかけた手を止め、都合のいい解釈、想像が頭に浮かび、緩んでしまう口元を隠すように手を当てたのは無意識で、振り向いた俺を真っ直ぐに見つめて、



｢うん･･･わざと。｣



･･･ほら･･･



･･･ほらね･･･こういう、たまらないことをするんだ･･･。