徒然なる恋の話

焔 はる

文字の大きさ
上 下
119 / 617
四夜【藍の深淵】

4-19~side by 桜太~

しおりを挟む
駐車場に車を停め、カードキーと暗証番号でエントランスを通過し、エレベーターを待つ。

その間も、繋いだ手を握りしめて、椎娜の目は泳ぎっぱなし。

高さのあるエレベーターホールを見上げれば口が開いているし、手入れされた談話スペースの観葉植物にすら、お辞儀をしそうな雰囲気。

笑ってはいけない、と唇を噛み締めて、その様子を観察した。



「どうぞ」

と招き入れ、椎娜用に用意していたスリッパを差し出す。

玄関で口をポカーンと開いたまはま、キョロキョロと室内を見渡している。

物珍しい物がそんなにあるわけでもないのに、借りてきた猫のように落ち着きなく、スリッパに履き替えたはいいが、所在無さげだ。

ポンチョを預かろうとしたら、まだ緊張があるのか指先が震えてボタンを外せずに焦っていて、

「・・・椎娜・・・まだ、緊張してる・・・?」

と、ボタンに手を伸ばしたら、「ごめん・・・」と謝るもんだから、俺からしたら謝られる要素なんて何ひとつ無いし、可愛らしいな、と思っているのに、こういうことすら、愛され慣れてないんだな・・・と、胸がキュッと痛み、抱きしめてしまった。

今夜も明日も2人で過ごせるし、時間はあるから、早く触れたい気持ちはあっても、性急にせずにゆっくりしようと思っていたのに・・・

ふいに見せる表情や、さっきのような少し焦ったり恥ずかしそうだったり、振り向いたら口を開けて天井で回っているシーリングファンを見ていたり。

1つ1つが可愛くて、その度に心臓は撃ち抜かれて穴だらけになっている。


抱きしめたまま髪にキスをして、お風呂に入ってからゆっくりしようと提案する。


あれだけ緊張しているのだから、きっと、お泊まりなんてどうしようとか、タオルは貸してくれるだろうか、シャンプーどうしよう・・・とかそんなのも考えてると思う・・・。

聞くタイミングを無駄に悩まなくていいように、風呂を準備してリビングに戻った時に、タオルとシャンプーについては先に伝えておいた。

持ってきたヘアケア用品があるならそれを使えばいいし、伝えて椎娜が安心出来るならそれでいい。

そのうち、俺の家にも椎娜の使う物は置くようにするつもりだし、そうしたら必要最低限の物だけ持ってくればいいから、お泊まりセットなんてバッグで持ってこなくてもいいだろう。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

初めてなら、本気で喘がせてあげる

ヘロディア
恋愛
美しい彼女の初めてを奪うことになった主人公。 初めての体験に喘いでいく彼女をみて興奮が抑えられず…

これ以上ヤったら●っちゃう!

ヘロディア
恋愛
彼氏が変態である主人公。 いつも自分の部屋に呼んで戯れていたが、とうとう彼の部屋に呼ばれてしまい…

RUBBER LADY 屈辱の性奴隷調教

RUBBER LADY
ファンタジー
RUBBER LADYが活躍するストーリーの続編です

結構な性欲で

ヘロディア
恋愛
美人の二十代の人妻である会社の先輩の一晩を独占することになった主人公。 執拗に責めまくるのであった。 彼女の喘ぎ声は官能的で…

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

♡蜜壺に指を滑り込ませて蜜をクチュクチュ♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショート♡年末まで毎日5本投稿中!!

車の中で会社の後輩を喘がせている

ヘロディア
恋愛
会社の後輩と”そういう”関係にある主人公。 彼らはどこでも交わっていく…

処理中です...