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四夜【藍の深淵】
4-19~side by 桜太~
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駐車場に車を停め、カードキーと暗証番号でエントランスを通過し、エレベーターを待つ。
その間も、繋いだ手を握りしめて、椎娜の目は泳ぎっぱなし。
高さのあるエレベーターホールを見上げれば口が開いているし、手入れされた談話スペースの観葉植物にすら、お辞儀をしそうな雰囲気。
笑ってはいけない、と唇を噛み締めて、その様子を観察した。
「どうぞ」
と招き入れ、椎娜用に用意していたスリッパを差し出す。
玄関で口をポカーンと開いたまはま、キョロキョロと室内を見渡している。
物珍しい物がそんなにあるわけでもないのに、借りてきた猫のように落ち着きなく、スリッパに履き替えたはいいが、所在無さげだ。
ポンチョを預かろうとしたら、まだ緊張があるのか指先が震えてボタンを外せずに焦っていて、
「・・・椎娜・・・まだ、緊張してる・・・?」
と、ボタンに手を伸ばしたら、「ごめん・・・」と謝るもんだから、俺からしたら謝られる要素なんて何ひとつ無いし、可愛らしいな、と思っているのに、こういうことすら、愛され慣れてないんだな・・・と、胸がキュッと痛み、抱きしめてしまった。
今夜も明日も2人で過ごせるし、時間はあるから、早く触れたい気持ちはあっても、性急にせずにゆっくりしようと思っていたのに・・・
ふいに見せる表情や、さっきのような少し焦ったり恥ずかしそうだったり、振り向いたら口を開けて天井で回っているシーリングファンを見ていたり。
1つ1つが可愛くて、その度に心臓は撃ち抜かれて穴だらけになっている。
抱きしめたまま髪にキスをして、お風呂に入ってからゆっくりしようと提案する。
あれだけ緊張しているのだから、きっと、お泊まりなんてどうしようとか、タオルは貸してくれるだろうか、シャンプーどうしよう・・・とかそんなのも考えてると思う・・・。
聞くタイミングを無駄に悩まなくていいように、風呂を準備してリビングに戻った時に、タオルとシャンプーについては先に伝えておいた。
持ってきたヘアケア用品があるならそれを使えばいいし、伝えて椎娜が安心出来るならそれでいい。
そのうち、俺の家にも椎娜の使う物は置くようにするつもりだし、そうしたら必要最低限の物だけ持ってくればいいから、お泊まりセットなんてバッグで持ってこなくてもいいだろう。
その間も、繋いだ手を握りしめて、椎娜の目は泳ぎっぱなし。
高さのあるエレベーターホールを見上げれば口が開いているし、手入れされた談話スペースの観葉植物にすら、お辞儀をしそうな雰囲気。
笑ってはいけない、と唇を噛み締めて、その様子を観察した。
「どうぞ」
と招き入れ、椎娜用に用意していたスリッパを差し出す。
玄関で口をポカーンと開いたまはま、キョロキョロと室内を見渡している。
物珍しい物がそんなにあるわけでもないのに、借りてきた猫のように落ち着きなく、スリッパに履き替えたはいいが、所在無さげだ。
ポンチョを預かろうとしたら、まだ緊張があるのか指先が震えてボタンを外せずに焦っていて、
「・・・椎娜・・・まだ、緊張してる・・・?」
と、ボタンに手を伸ばしたら、「ごめん・・・」と謝るもんだから、俺からしたら謝られる要素なんて何ひとつ無いし、可愛らしいな、と思っているのに、こういうことすら、愛され慣れてないんだな・・・と、胸がキュッと痛み、抱きしめてしまった。
今夜も明日も2人で過ごせるし、時間はあるから、早く触れたい気持ちはあっても、性急にせずにゆっくりしようと思っていたのに・・・
ふいに見せる表情や、さっきのような少し焦ったり恥ずかしそうだったり、振り向いたら口を開けて天井で回っているシーリングファンを見ていたり。
1つ1つが可愛くて、その度に心臓は撃ち抜かれて穴だらけになっている。
抱きしめたまま髪にキスをして、お風呂に入ってからゆっくりしようと提案する。
あれだけ緊張しているのだから、きっと、お泊まりなんてどうしようとか、タオルは貸してくれるだろうか、シャンプーどうしよう・・・とかそんなのも考えてると思う・・・。
聞くタイミングを無駄に悩まなくていいように、風呂を準備してリビングに戻った時に、タオルとシャンプーについては先に伝えておいた。
持ってきたヘアケア用品があるならそれを使えばいいし、伝えて椎娜が安心出来るならそれでいい。
そのうち、俺の家にも椎娜の使う物は置くようにするつもりだし、そうしたら必要最低限の物だけ持ってくればいいから、お泊まりセットなんてバッグで持ってこなくてもいいだろう。
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