徒然なる恋の話

焔 はる

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三夜【淡き水光】

3-16

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車の前まで来て、どうぞ、と言って助手席のドアを開け、椎娜の手を引いてエスコートすると、戸惑いながら俺を見上げた。

口、開いてる・・・(笑)

「え・・・?この車、桜太の・・・??」

「そうだよ?」

「・・・外国の車・・・?」

「うん」

「・・・おっきいね・・・」

・・・・・・感想・・・・・・(笑)

シートベルトを締めながら、椎娜は車内をキョロキョロ見回している。

そういえば、俺が勝手に椎娜の家に行く事はあったけど、椎娜を俺の車に乗せたり、2人でどこかにっていうのはなかったな・・・

彼氏がいる期間は家に来ないで。
勿論2人で出かけるのは嫌。
俺に彼女がいる時は家に来ないで。

そう椎娜が言うから、家に行かない時期もあったし、会わない期間もあった。

・・・それでも、椎娜が彼氏と上手くいってない空気はなんとなくわかることが多くて、そんな時期に連絡を取れば、やはりそんな返事が返ってくる。

たま~に都合が合って夕飯を一緒に食べるにしても、椎娜の家の近くの定食屋とか、ファストフード店で食べたり、安価な牛丼チェーン店ばかりだった。

それに、幼馴染みに奢られるのは嫌だ、と言って基本的に割り勘。

なので所謂ちょっといい店には行ったことがない。

・・・椎娜が横にいる。

ちょこんと座っている。

借りてきた猫みたいに大人しい。

チラッと横目で見ると、少し硬い表情の椎娜が窓の外を眺めていた。

横顔が車のライトや、街灯、様々な鮮やかな光に照らされて、ルージュを引いた唇が艶やかさを増す。

視線に気づいたのかこちらを向き、

「・・・なんか、緊張する・・・」

ネオンの明かりが煌々と輝きはじめる街へと車を走らせていると、椎娜がポツリと零す。

「ふふ・・・緊張してるの?」

信号で止まり、左手を椎娜の手に重ねた。

「ほんとだ・・・冷たくなってる。」

指を絡めて握り、指先に口付けた。

「・・・何に緊張してる?」

そう問えば・・・

俺の手を握り返して1本1本指を撫でながら、俯いたり、照れながら言葉にする。

「・・・2人でちゃんと出かけるの、初めて・・・桜太・・・スーツだし・・・なんか、違う人みたいで・・・運転してるのとか・・・ドキドキする・・・」

・・・・・・

・・・・・・・・・つらい・・・・・・・・・

抱きしめてめちゃくちゃにしたいのに出来ないのつらい・・・

この子、こんなに可愛いこと言うの・・・??

今までほんと、どんな恋愛してきたわけ・・・??


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