徒然なる恋の話

焔 はる

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二夜【新たなる福音】

2-9

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「椎梛のナカ、好き・・・」

「・・・そんな甘えた・・・みたいに言わないで」

そう言いながらも、嫌な気持ちはせず、手を伸ばして桜太を抱き寄せる。

熱を持った体に、背中に手を当てて上下に手を滑らせる。

いつの間にこんなに大きな体になっていたのだろう。

広い背中と、硬い胸・・・

私を見下ろす瞳は、幼馴染のそれではもうなかった。

見ようとせず、意識することもなかったのは私。

けれど1人の男として、今桜太は私の腕の中にいる。

「甘えたらだめなの?俺、甘えられたいし、甘えて欲しいけど、椎梛には甘えたい・・・順番違っちゃったけど、俺の彼女にしたい」

桜太の頭を撫でて、髪の合間に指を通したり、絡ませていた私の手を掴み、指先にキスをする。

「ねぇ、だめ・・・?」

「・・・だめじゃないよ・・・」

だめなわけない・・・。

今までずっと変わらなかったものは今日こうして形と関係を変えてしまった。

それは、私の応えがどうであれ元に戻ることは2度とないだろう。

長年失いたくないと思っていたもの、普遍を願うものもまた、同じ存在に対してだったのだから。

私は自分の指先に触れている桜太の手を取り、両手で包み込むように引き寄せて口付ける。

「・・・私以外さわらないで・・・?」

「っ・・・なんだよそれ・・・!当たり前だ・・・ろ?てことは・・・?」

忙しそうに表情を変えながら、私が言った意味に気づいて目を見開く。

「私は桜太といたい・・・」

こんな、言ったことのない言葉を自然に言えたのは、相手が桜太だったから。

それ以外にないだろう。

幼馴染から恋人へと関係が変わっても、桜太は桜太だと信じられるから。

桜太の瞳が近付いて、ゆっくりと唇が重なる。

触れて、ついばんで、また重なる。





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