徒然なる恋の話

焔 はる

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一夜【 淡き光 】

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職場に近い場所ではなく、私は通勤にある程度時間がかかる場所にマンションを借りた。

家から最寄りの駅までは徒歩10分。
会社の最寄り駅まで電車で20分。
そこから徒歩10分。

それが私なりの丁度いい時間。

このマンションを選んだ理由は、最上階の6階からの景色。

遠くの街の、ぼんやりと灯るあかりが気に入ったのだ。

住宅街からも少し離れた立地にあるマンションは、騒音に悩まされることもなく、ある種、隔離されたような静けさだった。

鍵を取り出しながらエレベーターを降りると、部屋の前に座り込む人影が目に入る。

・・・また来てる。

その人影は、私の足音に気づき顔を上げた。

「やっと帰ってきた~」

よく通るのに間延びしたような、甘えたような独特な、いや、残念な話し方。

「また来たの・・・」

さっきは心で思っただけの本音が、今度はきちんと「本音」として口をついた。

私は玄関前にいるそれ・・を一旦無視して鍵を開けて部屋に入る。

その後ろを当たり前についてくるのは、パンプスを履いた私(6cmヒール+で155cm)を、更に上から見下ろすバカデカい男。

2、3年前に聞いた時で185cmと言っていた気がする。

「またそんな言い方する~。幼馴染みが来たらダメなの?」

勝手知ったるという態度で、ボディバッグを部屋の隅に置き、靴下を脱ぎ、洗面所で手を洗い、冷蔵庫からペットボトルのアイスコーヒーを取り出してグラスに注ぐ。

それを手にリビングへと移動すると、ベランダへ続く窓を開けて風を入れた。

少し冷たさを含んだ風が部屋へと流れ込む。

「はぁ~、涼しいねぇ」

テーブルの前に腰を下ろし、呑気に風を浴びている。

私はそれを横目にシャワーを浴びに向かう。

奴は放っておいても過ごしやすいように勝手にやるので、気にしなくてもいいのだ。

3歳年下の幼馴染み、【時永桜太ときながおうた】、24歳。

かれこれ20年来の付き合いだ。

私が小学生1年生になった冬、幼稚園児だった桜太と歩き始めたばかりの妹と両親というその一家は隣の家に越してきた。

気が合ったらしいうちの両親と桜太の両親は、ことあるごとに旅行やら、キャンプやら、誕生日パーティにクリスマス、あらゆるイベントを企画し、あちこちへと出かけた。

それは子供たちが成人し、家を離れた今も夫婦同士良好な関係として続いている。

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