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しおりを挟む「綾さん、知ってます?」
シャワーを浴びた忽那くんは、お粥を食べて薬を飲み、大人しくベッドに入ったが、熱を測るとまだ37度後半で、貼ってると気持ちいいからとおデコには冷えピタを貼っている。
そんな彼と向かい合って、シングルベッドに私も一緒に潜り込んだ。
「俺・・・結構緊張してるんです・・・ふへへ」
「なんでよ。」
「だって、俺のベッドに綾さんがいる・・・ドキドキしないわけないじゃないですか」
「・・・・・・じゃ、知ってる?」
「何がです??」
広いとは言えないベッドに成人男女が2人。
忽那くんが細身でよかった、と思うし、私も身長が高い方ではないから、ギュウギュウではないけどやはり距離が近くて、つないだ手以上に身体が触れないように無意識のうちに身体に力が入ってしまう。
「・・・・・・最近、忽那くんが可愛く見えて困ってるって事」
「え・・・・・・それ・・・・・・カッコよくてじゃないんですか?」
「そこ?(笑)」
「だって、せっかく綾さんが気にしてくれてるのに・・・俺、ダセぇとこばっかりで・・・」
「・・・そこについては触れないけど」
「触れてください、ガッシガシ触れて下さいよっ」
「・・・・・・嫌じゃない事の方が増えてる」
「・・・・・・そういうの、嬉しいです。前ならこんなの考えられなかったのに。」
「ねぇ、なんで名前で呼ぶの?」
今日、突然私を名前で呼び始めた事がずっと気になっていて、ついに私は聞いてみた。
「本当はずっと呼びたかった・・・でも怒られそうだし、名前が汚れるって言われそうだし言えなくて、2人の時ならいいかなって・・・ダメ元で。」
「・・・・・・」
「やっぱり・・・嫌、でした・・・?」
・・・ほら、そうやって私を見るのも可愛いのよ。
知らないでしょうね。
「・・・2人の時なら。」
「え、じゃあ俺の事も、透真、って・・・」
「調子にのるな。」
「んぶ」
鼻をつまんでやると、それも嬉しそうに笑うから、ほんと・・・まいるな・・・。
ただのクソ生意気な後輩が、ここまで自分の中に入り込んで、それを許しそうになっている事が、自分でもいまだに信じられない。
忽那くんは鼻をつまんだ私の手を外し、
「・・・あと、好きだから・・・名前で呼びたくて・・・」
「・・・・・・正直・・・・・・」
「はい・・・」
「・・・嫌じゃない。」
「!え・・・(笑)あはは、え、蓮見さん、あ、間違った、え、綾さん(笑)」
「年下の男の子から呼ばれるの、なんか新鮮だったから。」
「ふぅん・・・?いやじゃないどころか、満更でもなかったと。」
「・・・・・・何よ。」
「い~~~え~~~??俺はドキドキしてたのに綾さんは余裕でお楽しみだったんだなァ~~なんて、拗ねてないですよ?全然。」
・・・拗ねている。
熱も相まって、あざとさ増量で拗ねている。
冷えピタも可愛く見えて私の目は病気かもしれない。
「ねぇ」
「つーーん」
「ねぇってば」
「ふ~~ん」
「・・・・・・透真くん、こっち見て。」
「!!ふ、ぐ・・・ッ・・・も、もももぅぅぅッ、ぅもっか、い・・・!」
・・・(笑)
この子、素直で、おばかで、もぉ・・・ほんと・・・
「ふ、ふふふ・・・あははは・・・ッ」
「・・・綾さん?」
「はは・・・やめて、なんなの?」
「え・・・」
「・・・あなたの事が可愛くていやになるわ」
真っ直ぐで・・・おばかで・・・正直で、案外紳士。
誰にでも解いた事がなかった警戒心が、いつの間にかゼロになっている。
一緒にいる事が楽しいと思ってしまっている。
「・・・あなたが私を思う好きと同じかはわからない・・・でも、あなたのこと、たぶん、好きよ」
数秒フリーズ。
目玉が渇きそうなほど見開いて、システムダウンしていた機能が再起動すると、「ちょ・・・よくわからないです」と、真面目にマヌケな返事。
「りょ、りょ、りょ・・・りょう、さんッ・・・も、もっかい!」
「やぁよ。チャンスは1度だけ。残念でした」
「え~~~!!そんなァァァッ」
「ほら、また熱上がるわよ、知恵熱のぼく。」
体温を確認するために、首筋と頬に触れた手を忽那くんの手が捕らえた。
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