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「ん。拭いて、綾さん」
「・・・は?」
え、これは何?私に拭けと言ってるのか??
熱で無駄に色気が増して、甘えん坊発動のこの男は、パンイチの格好で無防備に私に両手を広げて・・・
・・・私に、拭けと・・・??
「・・・っ・・・まだ、用意してないから・・・向こうで・・・」
「やだ。早く。俺の事拭いて」
「ちょっ・・・」
「・・・汗かいたから触りたくないの・・・?」
迫りくるのは先日触りまくった裸体の若者。
触りたくないの?じゃない!
反論は許されず、掴まれた手は私の気持ちが追いつかないまま、熱を持つのにひんやりとした肌に吸い付くように押し当てられた。
「・・・あは、ドキドキしてる、俺。」
薄い滑らかな皮膚の下で響く命の音。
「・・・・・・も・・・や、め・・・・・・」
「綾さん・・・?」
ついに耐えきれなくなって、私はズルズルと座りこんだ。
次々に展開される、甘えん坊忽那の攻撃。
かわそうとしても、今まで保っていた距離の堤防は壊し、壊されて、簡単なバリケードしかないに等しい今の私たちのディスタンスは、熱に浮かされた忽那くんの可愛さも・・・いや、そんなまやかしただの幻想だとしてもタチが悪く、私は逃げ場を失った。
「ごめんなさい・・・」
「え・・・?」
「・・・・・・困らせてるってわかってるのに、俺・・・綾さんが俺に困ってくれるのが嬉しい・・・。」
「・・・!」
「・・・・・・でも、ほんと・・・嫌な事はしてほしくないから、俺、シャワー浴びてきますね。」
・・・・・・私の手を握っていた熱くて硬い手が離れていく。
傷つけたかもしれない・・・ギリギリのラインを保って、距離感を維持してくれているのは忽那くんだ。
「あの・・・っ」
「?綾さん?」
「・・・ごめん」
「え?何がですか??」
「だって・・・ごめん・・・できなくて・・・」
「・・・・・・綾さん、俺は綾さんがしたくない事、できない事を知れてよかったって思ってます。俺こそ・・・調子に乗ってすいません・・・。」
忽那くんが、ペコ、っと頭を下げ、再び私を見て微笑む。
けれど、こうして私を追い込まないで、追い詰めないでいてくれる忽那くんに私が救われているのも確かで。
「・・・綾さん?」
「・・・・・・ありがとう」
同じようにペコっと頭を下げた私に、忽那くんが驚いている。
「・・・私、前より・・・嫌じゃないよ・・・嫌じゃないけど・・・」
・・・・・・受け入れる事ができない、『苦痛』に感じる事がある。
距離感が近くなる。
少しずつ、少しずつ、隣にいても苦痛じゃない、心の準備もできないままに触れられても怒りが湧くことはほぼなくなった。
嫌悪感や苦痛が完全に消えているわけじゃないけど、以前よりは格段に忽那くんとの距離は近くなっている。
物理的な距離感だけではなく、心の距離も・・・。
「嫌じゃないなら、それで十分です。嫌じゃないからって、無理に一歩進まなくてもいいんじゃないですか?俺は、今のこの距離感を綾さんが許してくれている事がすごく嬉しいです。」
「・・・・・・手。」
「?手・・・?」
差し出された手から、人差し指を握る。
「・・・・・・今日・・・一緒に寝よ・・・・・・?」
「え・・・でも・・・無理、してたり、気ぃ遣ったり・・・」
「してない、私がそうしたいから・・・」
「・・・ふ~ん・・・ぼくはいいですよ?願ったり叶ったり・・・綾さんに寝かしつけてもらいますからね?」
「手、つなぐだけよ」
「あ、手はいいんですね?!ふふ、やったぁ~。じゃあ、ちゃっちゃとシャワー浴びてきます!」
・・・嫌じゃない。
それに、こんな事でも喜んでくれる彼を可愛いと思う。
こんな事しかできない私と一緒にいる事を喜んでくれる・・・それに少しずつ、応えられたら、と思う。
・・・忽那くんの手を握っていた手が、僅かに震えていた。
「・・・は?」
え、これは何?私に拭けと言ってるのか??
熱で無駄に色気が増して、甘えん坊発動のこの男は、パンイチの格好で無防備に私に両手を広げて・・・
・・・私に、拭けと・・・??
「・・・っ・・・まだ、用意してないから・・・向こうで・・・」
「やだ。早く。俺の事拭いて」
「ちょっ・・・」
「・・・汗かいたから触りたくないの・・・?」
迫りくるのは先日触りまくった裸体の若者。
触りたくないの?じゃない!
反論は許されず、掴まれた手は私の気持ちが追いつかないまま、熱を持つのにひんやりとした肌に吸い付くように押し当てられた。
「・・・あは、ドキドキしてる、俺。」
薄い滑らかな皮膚の下で響く命の音。
「・・・・・・も・・・や、め・・・・・・」
「綾さん・・・?」
ついに耐えきれなくなって、私はズルズルと座りこんだ。
次々に展開される、甘えん坊忽那の攻撃。
かわそうとしても、今まで保っていた距離の堤防は壊し、壊されて、簡単なバリケードしかないに等しい今の私たちのディスタンスは、熱に浮かされた忽那くんの可愛さも・・・いや、そんなまやかしただの幻想だとしてもタチが悪く、私は逃げ場を失った。
「ごめんなさい・・・」
「え・・・?」
「・・・・・・困らせてるってわかってるのに、俺・・・綾さんが俺に困ってくれるのが嬉しい・・・。」
「・・・!」
「・・・・・・でも、ほんと・・・嫌な事はしてほしくないから、俺、シャワー浴びてきますね。」
・・・・・・私の手を握っていた熱くて硬い手が離れていく。
傷つけたかもしれない・・・ギリギリのラインを保って、距離感を維持してくれているのは忽那くんだ。
「あの・・・っ」
「?綾さん?」
「・・・ごめん」
「え?何がですか??」
「だって・・・ごめん・・・できなくて・・・」
「・・・・・・綾さん、俺は綾さんがしたくない事、できない事を知れてよかったって思ってます。俺こそ・・・調子に乗ってすいません・・・。」
忽那くんが、ペコ、っと頭を下げ、再び私を見て微笑む。
けれど、こうして私を追い込まないで、追い詰めないでいてくれる忽那くんに私が救われているのも確かで。
「・・・綾さん?」
「・・・・・・ありがとう」
同じようにペコっと頭を下げた私に、忽那くんが驚いている。
「・・・私、前より・・・嫌じゃないよ・・・嫌じゃないけど・・・」
・・・・・・受け入れる事ができない、『苦痛』に感じる事がある。
距離感が近くなる。
少しずつ、少しずつ、隣にいても苦痛じゃない、心の準備もできないままに触れられても怒りが湧くことはほぼなくなった。
嫌悪感や苦痛が完全に消えているわけじゃないけど、以前よりは格段に忽那くんとの距離は近くなっている。
物理的な距離感だけではなく、心の距離も・・・。
「嫌じゃないなら、それで十分です。嫌じゃないからって、無理に一歩進まなくてもいいんじゃないですか?俺は、今のこの距離感を綾さんが許してくれている事がすごく嬉しいです。」
「・・・・・・手。」
「?手・・・?」
差し出された手から、人差し指を握る。
「・・・・・・今日・・・一緒に寝よ・・・・・・?」
「え・・・でも・・・無理、してたり、気ぃ遣ったり・・・」
「してない、私がそうしたいから・・・」
「・・・ふ~ん・・・ぼくはいいですよ?願ったり叶ったり・・・綾さんに寝かしつけてもらいますからね?」
「手、つなぐだけよ」
「あ、手はいいんですね?!ふふ、やったぁ~。じゃあ、ちゃっちゃとシャワー浴びてきます!」
・・・嫌じゃない。
それに、こんな事でも喜んでくれる彼を可愛いと思う。
こんな事しかできない私と一緒にいる事を喜んでくれる・・・それに少しずつ、応えられたら、と思う。
・・・忽那くんの手を握っていた手が、僅かに震えていた。
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