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9:タイトル未定
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しおりを挟む「・・・離して・・・」
「・・・・・・やっぱり、だめですか・・・?」
「この部屋、必要な物何もないじゃない・・・買ってくるから、一旦帰るわ。」
「え・・・・・・それって・・・・・・看病、プレイ・・・」
「何言ってるの?」
「あ、いや、熱で頭が・・・」
「いつもと同じよ?」
「ひどい」
「とにかく、一度戻るから忽那くん、あなたは大人しくベッドに入ってること。いい?」
「はい。・・・・・・綾さん・・・」
「・・・なに?」
それも名残惜しくて、まさか看病してくれるなんて、一緒にいてくれるなんて嬉しすぎて、押し返された胸に触れる手を握った。
「・・・ふへ・・・ありがとう、ございます・・・」
「・・・・・・っ・・・・・・わ、っ・・・わかった、から・・・離して・・・」
「はぁい、絶対、戻ってきてくださいね」
パタン、と静かに閉まる玄関のドア。
1人が当たり前の部屋に、さっきまで蓮見さんがいた事が信じられない。
楽しかったのに、今は火が消え、温もりが冷め、シンとした冷たさが部屋を満たしていた。
戻ってきた蓮見さんの機嫌を損ねて「もう知らない」と言われてしまったら悲しすぎるので、俺は蓮見さんの言いつけを守り、大人しくベッドに潜り込む事にした。
手をつないでも、怒られなかった。
それは出会った頃に比べれば目覚ましいほどの距離の縮まり方で、嬉しくてニヤける。
離れていく手が寒くて、蓮見さん・・・早く戻って来ないかなぁ・・・と、蓮見さんの手に触れていた左手を握り締めた。
ーーーーーーーー
~side 綾~
・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・あぁぁぁ・・・・・・っ
「・・・・・・困ったなぁぁ・・・・・・」
忽那くんの部屋を出て、閉じた扉の外で私は頭を抱えた。
先日の仙台出張の時に変化した忽那くんと私の距離感。
私が提示した条件、約束を守ってくれていた忽那くんとの距離を壊したのは私だ。
性的なものは求めていない、それは変わらないのに、いつも当たり前に側にいるようになった彼への感情が変化していってたのは誤魔化せない。
可愛い、と思った。
触れたい、と思った。
生意気でこ憎たらしいところもあるのに、自然体でいてくれる彼のお陰で、いつの間にか私自身が彼の前では自然体でいられるようになっていた。
助けてくれた際に事故的に触れた身体。
他人の、いや・・・忽那くんの手も、体温も、嫌じゃない事にまず自分が動揺した。
嫌悪感ではなかった事、それどころか、『安心感』すら覚えた事に、柄にもなく動揺して、接する距離感や態度が何なら正解か分からなくなり、ラブホのお風呂にて泥酔居眠り。
・・・・・・裸を見られてしまった・・・・・・
それについて何も触れてこないのも、彼と私の経験の差によるものかもしれないし、約束を守ろうとする彼の決意の表れなのかもしれないけど、最近はだめだ・・・ほんと・・・緩む・・・・・・忽那くんといると、緩んでしまう・・・・・・
一緒の空間にいる事も、触れる事も、嫌じゃない・・・
分類は不明、けれど私のナカにあるのは確かに、『平坂さんにはあげない』その思いだった。
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