32 / 60
6:Room of a secret
6-6
しおりを挟む「・・・蓮見さん・・・俺・・・大福、大好きなんです・・・」
「え・・・?大福・・・??」
「今目の前に、俺の腕の中には、とてもとても美味しそうな大福があるんです。でも、俺は・・・それを食べちゃだめ、って決められてるので、・・・さわれません・・・」
白い掛け布団は、ホテルで定番の白いカバーが掛かった掛け布団。
サラサラした手触りなのに、熱く汗ばんだ俺の手は布団に張り付く気がした。
目の前にいる蓮見さんに対して取るべき言動の正解が導き出せず、かと言って茶化してしまっていいのか正解もわからなくて、心臓は逆流しそうな程煩く音を立てる。
耳障りな流行りのアイドルの曲が流れる密室。
愛だの恋だのキスだの会いたいだの私を見てだのって・・・うるさいんだよ・・・!
「・・・・・・蓮見さん・・・今日、どうしたんですか・・・?」
俺は大福を抱きしめていた腕を解き、背後に両腕を着いた。
・・・だって・・・だめだ・・・こんなに近くて、簡単に触れられる距離なのに、蓮見さんの気持ちがわからなさすぎて距離を取るしか方法がない・・・。
「・・・わからない・・・」
「・・・・・・何がです・・・・・・?」
「・・・困ってる・・・」
「・・・・・・何に・・・・・・?」
顔を出した大福は、眉間に皺を寄せて、口をへの字に結び、「わからない、困ってる」と俺を見上げて睨みつけた。
「~~~~~!!もぅ!!嫌いッ!!」
「ちょッ蓮見さん?!」
顔だけ出ていた大福から、ズボッ!!!!っと生えた両手が、バシ!バシ!!と布団を叩いて、「嫌い、大嫌い」と言葉を放つ。
「蓮見さんっ・・・手、痛めますよ・・・ッ」
「なんでッ・・・なんでよ、ぉ・・・・・・嫌い・・・嫌いなのに・・・」
いくら叩いているのが布団だと言っても、あまりにも力任せすぎて、俺は握られて布団を叩きまくる蓮見さんの拳を両手で受け止めた。
俺の片手には1つずつ納まった蓮見さんの握りこぶし。
触れているのに怒らない蓮見さん・・・
どうしたんだよ・・・
「・・・すいません、俺・・・」
「・・・・・・じゃなぃ・・・・・・」
「え?」
「・・・・・・嫌い・・・きらい、なのに・・・・・・いやじゃ、ないの・・・・・・」
・・・・・・は・・・・・・?????
予想外すぎる言葉に、俺は言葉がどこかへ飛んで行ってしまった。
「・・・は・・・はは・・・ま、さか・・・え・・・」
「・・・・・・嫌じゃないの・・・どうしよう・・・・・・前みたいにできない・・・・・・」
「はっはす、蓮見さん・・・!!泣かないでよ!!落ち着いてっ!!」
「うわぁぁ・・・ぁぁぁぁッ・・・」
「えぇぇぇぇぇぇ・・・ッ」
子供みたいに大泣き。
堪えて泣くとかじゃなくて、泣きじゃくるという大泣き。
「嫌だぁぁぁ・・・ッなん、なん、でッ・・・好き、じゃない、のにぃッ」
「・・・(笑)」
こんなに大泣きする蓮見さんがそんなに泣いている原因が俺なんて・・・。
嬉しくてニヤけるし顔が緩んで仕方ない。
涙と鼻水でグチャグチャになってきた蓮見さんにティッシュを渡す為に、大福を囲んでいた足をどかした。
「!まっ・・・」
「蓮見さん・・・?」
「・・・・・・飽きた、の・・・?」
はい・・・もう、アウト。
蓮見さん、あなたアウトです、人の気も知らないで、自分から俺の手掴んでそんな風に見上げて・・・
「・・・蓮見さん、最初と今・・・俺の事、あの時と同じくらい嫌いですか?」
手首を握る蓮見さんの手が熱い。
俺の言葉にびくっとしても手が離れる事はなく、咄嗟に取ってしまった行動に自分でも驚いている。
ベッドの枕元からティッシュを数枚引き抜いて、蓮見さんの顔に押し付けた。
0
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説
【R18】こんな産婦人科のお医者さんがいたら♡妄想エロシチュエーション短編作品♡
雪村 里帆
恋愛
ある日、産婦人科に訪れるとそこには顔を見たら赤面してしまう程のイケメン先生がいて…!?何故か看護師もいないし2人きり…エコー検査なのに触診されてしまい…?雪村里帆の妄想エロシチュエーション短編。完全フィクションでお送り致します!
【R18】隣のデスクの歳下後輩君にオカズに使われているらしいので、望み通りにシてあげました。
雪村 里帆
恋愛
お陰様でHOT女性向け33位、人気ランキング146位達成※隣のデスクに座る陰キャの歳下後輩君から、ある日私の卑猥なアイコラ画像を誤送信されてしまい!?彼にオカズに使われていると知り満更でもない私は彼を部屋に招き入れてお望み通りの行為をする事に…。強気な先輩ちゃん×弱気な後輩くん。でもエッチな下着を身に付けて恥ずかしくなった私は、彼に攻められてすっかり形成逆転されてしまう。
——全話ほぼ濡れ場で小難しいストーリーの設定などが無いのでストレス無く集中できます(はしがき・あとがきは含まない)
※完結直後のものです。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
彼女の母は蜜の味
緋山悠希
恋愛
ある日、彼女の深雪からお母さんを買い物に連れて行ってあげて欲しいと頼まれる。密かに綺麗なお母さんとの2人の時間に期待を抱きながら「別にいいよ」と優しい彼氏を演じる健二。そんな健二に待っていたのは大人の女性の洗礼だった…
【R18 大人女性向け】会社の飲み会帰りに年下イケメンにお持ち帰りされちゃいました
utsugi
恋愛
職場のイケメン後輩に飲み会帰りにお持ち帰りされちゃうお話です。
がっつりR18です。18歳未満の方は閲覧をご遠慮ください。
【R-18】クリしつけ
蛙鳴蝉噪
恋愛
男尊女卑な社会で女の子がクリトリスを使って淫らに教育されていく日常の一コマ。クリ責め。クリリード。なんでもありでアブノーマルな内容なので、精神ともに18歳以上でなんでも許せる方のみどうぞ。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる