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4:blue illusion

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「・・・・・・ッ・・・私は、そういうのを機微に感じ取れない・・・。自分は不愉快になりたくないとか言ってるけど、人を不愉快にしていることは沢山ある、と思う・・・。そういう・・・自覚はある・・・ないわけじゃない・・・。でも、距離を詰めたところで、私は・・・・・・だめ、なの・・・。結局、受け入れられない・・・自分が不快じゃないか、不愉快じゃないか、それが一番大事でしかない・・・・・・。だから・・・・・・あなたが、私の言葉の何に怒っているのかわからない・・・・・・。水族館は、思ったよりも楽しくて、嫌じゃなかった・・・・・・距離が近づいても、それ以上に近づかないよう、触れないようにしてくれていたし、人がぶつかりそうになったりしても、自分が壁になってくれていたのもわかってる・・・。約束を破らないようにしてくれていたのも、知ってる・・・・・・。」


堰を切ったように、何をそんなに必死になる必要があるのか、蓮見さんは言葉を続ける。


「・・・だから・・・・・・・・・わりと・・・・・・ありがとう・・・・・・」


それは、思いがけないにもほどがある言葉。
想像すらしていなかったと言ってもいい。


「蓮見さん、別に気を遣って言ってもらわなくても・・・」


「嘘じゃない」


振り向いた俺を真っ直ぐに睨んでいると言ってもいい程の、射抜く瞳と視線がぶつかった。

ぶつかった勢いで言えば交通事故レベルの衝撃。

嘘じゃない、という言葉を本気で疑う、めちゃくちゃ無理してるでしょ、という恨みの籠ったような視線。


「・・・俺は・・・蓮見さんの言葉に何か怒っているというより、蓮見さんの言葉
1つに傷ついた自分に驚いたんです。」


今度は、俺の言葉に目を見開き、その後『は?何が?あなたが???』と不信感、怪訝さ、信じられない、が複雑に絡み合った表情で、唇に拳を当てる。

唇に人差し指の側面で触れるように、トントンと考える仕草。

少し伏し目がちに視線を落とし、条件反射のように俺が『可愛いな』と思った思考を蓮見さんの声が引き戻した。


「・・・・・・あなた、傷つくの・・・・・・?私の言葉で???」


「ふっ・・・だから驚いたんですよ・・・。自分以外他人だと思っていたのに、それを好きな人から言われる事がこんなに痛いなんて・・・自分でも痛すぎて、感情をどう処理していいかわかりませんでした。」


自嘲気味に笑いが零れる。


「他人・・・そう考えるのが楽だと思ってた・・・実際にそう思っていた方が楽だ・・・。でも、寂しい言葉だ・・・。それに気づいた時、痛すぎて、他の誰よりも蓮見さんに言われるのが・・・こんなに痛いと思わなくて・・・泣きそうでした・・・」


「・・・!ちょ・・・・・・え、なんっ・・・・・・忽那、く、ん・・・・・・?!」


驚く蓮見さんの前に立つ俺は、恥ずかしいくらいに泣いた。


『他人』という言葉の痛みと、こんなにも短期間、短時間の間に蓮見さんを自分でも感情が追い付かずに気づかない程好きになっていたこと、そして、初めて見る焦った様子で弁明する蓮見さんが、少しでも俺の様子を気にしてくれていたことが嬉しくて、子供のように泣いた。
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