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Capsule5:失くした記憶と縁結び
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「イザナギ?!どうしたの?!」
「神様!!」
「だめだ、佳月、触れるな。」
「でもッ・・・」
パッと立ち上がり、俺の側に縋る佳月の跳躍力はさすがに猫だな、と感心するが、その姿を映しているのは俺の右目だけだ。
左目は本体からの穢れが伝播し機能していない。
佳月が俺に手を伸ばすのを触れないように制して、
「イザナギ!左目・・・!」
「・・・ふ・・・お主らを無事に帰す・・・」
剣を支えに立ち上がり、佐智の額に手を翳した。
これしきの事でフラつくなぞ・・・ざまぁないな・・・
いくら生まれ変わりの神だとしても、この体たらく・・・情けなくて笑えてくる。
「佐智、戻りたいか?」
「え・・・?」
「ここはお主の記憶の世界だ。良い記憶、辛い記憶、悲しい記憶、それら何度も繰り返すお主の記憶の中。魔の存在に魅入られたお主は、現実からこの中に捕らわれた。あちらに戻らず、ココに留まる事もできよう。だがそれは現実での死を意味する。お主はあちらへ帰る事を望むか?」
「・・・私は・・・」
「・・・・・・佐智、残りたいのなら、帰りたくないのなら、俺も共に残ろう。」
「え・・・?」
「お主をひとり残したりはせぬ。」
「じゃあ俺も残ってやるよ」
ふふん、と佳月は鼻を鳴らし、先ほどまでの恥ずかしさはどこへやら、佐智へ抱き着く。
「お主と同じ人間ではないが、そうすれば寂しくはなかろう。」
「そうだな、ここには佐智をいじめるやつも、俺を殺した奴もいない、嫌な人間どもはいないんだ、ここに3人でずーっと一緒にいようぜっ」
「でも・・・」
「どうした?」
「っ・・・イザナギには、イザナミが・・・」
・・・・・・・・・あぁ・・・・・・・・・
すっっっかり忘れておった。
イザナミ、な・・・・・・元夫の事なぞとうに切り捨てて、人間の若い男とよろしくやっている元妻イナザミ・・・、今の今まで忘れておったわ・・・
「・・・・・・どうしたの?イザナギ、具合悪い?」
「あぁ、大丈夫だ、心の具合が一瞬な。佐智、イザナミの事は、もうよいのだ。」
「え・・・?」
この穢れた手では撫でてやる事も、触れてやる事も出来ぬが、俺が触れたい娘は・・・愛しい娘はお主だけだ。
「神様!!」
「だめだ、佳月、触れるな。」
「でもッ・・・」
パッと立ち上がり、俺の側に縋る佳月の跳躍力はさすがに猫だな、と感心するが、その姿を映しているのは俺の右目だけだ。
左目は本体からの穢れが伝播し機能していない。
佳月が俺に手を伸ばすのを触れないように制して、
「イザナギ!左目・・・!」
「・・・ふ・・・お主らを無事に帰す・・・」
剣を支えに立ち上がり、佐智の額に手を翳した。
これしきの事でフラつくなぞ・・・ざまぁないな・・・
いくら生まれ変わりの神だとしても、この体たらく・・・情けなくて笑えてくる。
「佐智、戻りたいか?」
「え・・・?」
「ここはお主の記憶の世界だ。良い記憶、辛い記憶、悲しい記憶、それら何度も繰り返すお主の記憶の中。魔の存在に魅入られたお主は、現実からこの中に捕らわれた。あちらに戻らず、ココに留まる事もできよう。だがそれは現実での死を意味する。お主はあちらへ帰る事を望むか?」
「・・・私は・・・」
「・・・・・・佐智、残りたいのなら、帰りたくないのなら、俺も共に残ろう。」
「え・・・?」
「お主をひとり残したりはせぬ。」
「じゃあ俺も残ってやるよ」
ふふん、と佳月は鼻を鳴らし、先ほどまでの恥ずかしさはどこへやら、佐智へ抱き着く。
「お主と同じ人間ではないが、そうすれば寂しくはなかろう。」
「そうだな、ここには佐智をいじめるやつも、俺を殺した奴もいない、嫌な人間どもはいないんだ、ここに3人でずーっと一緒にいようぜっ」
「でも・・・」
「どうした?」
「っ・・・イザナギには、イザナミが・・・」
・・・・・・・・・あぁ・・・・・・・・・
すっっっかり忘れておった。
イザナミ、な・・・・・・元夫の事なぞとうに切り捨てて、人間の若い男とよろしくやっている元妻イナザミ・・・、今の今まで忘れておったわ・・・
「・・・・・・どうしたの?イザナギ、具合悪い?」
「あぁ、大丈夫だ、心の具合が一瞬な。佐智、イザナミの事は、もうよいのだ。」
「え・・・?」
この穢れた手では撫でてやる事も、触れてやる事も出来ぬが、俺が触れたい娘は・・・愛しい娘はお主だけだ。
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