幸せになりたい神様を拾いました

Capsule５：失くした記憶と縁結び

5-21

「俺の名前は･･･」



ーーーーー佳月かげつ。



少年が名を口にした瞬間、闇に覆われた佐智の記憶の中が眩い光に包まれた。



「･･･人に嫌われるとか、呪われるとか、縁起が悪いとか言われた俺の黒いカラダだけど佐智は、漆黒の夜空に浮んでいる月みたいって、金色の瞳が綺麗なお月様みたいね、って･･･左右の瞳は俺と佐智だって、言ってくれたんだ･･･。金色の瞳が映える綺麗な身体だって。だから、特別な名前なんだ･･･俺、すごく気に入ってるんだ･･･。」



佳月･･･それは、名月とか美しい月とか、とてもシンプルな意味合いを持つ言葉。

けれど、人間に忌み嫌われその姿故に命を落とした黒猫を救うには十分すぎる、存在を肯定する言葉だ。


周囲の闇は光に染まり祓われた。


「･･･ほらな、俺が言葉をかけるよりも、お主の中には揺らぐ事のない佐智からもらった名前ことばがあったではないか。」


名前、そこに込めた佐智の思いが少年の心を救った。


人間に傷つけられ、憎悪の塊として人間を呪う存在になっていたかもしれない黒猫の魂を癒して救ったのは、佐智からもらった名前と佐智と過ごした時間と思いだ。


「佳月･･･美しい名だ･･･。」

「･･･っうるせ･･･っあんま、気安く呼ぶんじゃねぇ･･･ょ･･･」

「ふ、なんだ、照れておるのか？」

「照れてなんかねぇ！！ほら、行くぞ！！佐智を助けるんだろ？！」

「あぁ、行こう、佳月、お主が共に来てくれるのなら俺も心強い。」

「･･･仕方ねぇだろ･･･佐智はあんたのこと･･･」

「？すまぬ、聞き取れんでな･･･もう一度言ってくれるか？」

「！！なんでもねぇよ！！大したことじゃねぇ！ひとりごとだから気にすんな！！」


･･･佳月に怒られてしまった･･･。