幸せになりたい神様を拾いました

Capsule５：失くした記憶と縁結び

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「黒猫の少年･･･お主すごいのぅ･･･」

俺は感嘆の声を漏らしてしまった。

これは、強く温かな純粋な”思い”だ。

１匹の猫として佐智に可愛がられていた時に受けた佐智からの思い。

それに対して抱いた少年思いが、これほどまでに強く温かく佐智の中を照らす光となって少年の中から生まれている。

ひとに飼われるペットや生き物には基本的に人間が持つような善悪、損得の感情はない。

ただただ、純粋な存在だ。

しかし、関わる人間にから何をされるのか、向けられ与えられるものが何なのかで生き物が抱く感情は変わる、性格も思考も変わっていく。

「･･････これは、佐智がくれたんだ。佐智がくれた温かいものが俺の中にある。だから、佐智の為なんだ。死んだ時に思った･･･どうして佐智は助けてくれないのか、どうしてこいつらは笑いながら俺を痛い目に合わせるのか･･･骨が砕けて、口の中が血の味がして、血を吐いて、鳴き声もあげられなくなって、目も見えなくなって、耳も聞こえなくなった･･･身体も動かない･･･何度も宙を飛んだ、硬い地面や壁に何度もぶつかって、痛くて痛くて、でも逃げられなかった･･･佐智の元にも帰れない･･･身体の中で何かが弾けたんだ･･･その瞬間、俺の世界は止まった･･･暗くて暗くて何も見えない･･･冷たくて、重くて、どこにも行けない･･･でも、名前を呼んでくれる誰かがいて･･･俺は上からそれを見た･･･佐智は泣いてた･･･泣きながら謝るんだ･･･」

金色の瞳から大粒の涙が零れ落ちた。

涙が落ちたその場所は、足元も見えない闇を金色に染める。

「ごめん、ごめん、私に会わなければよかったって、何度も謝るんだ･･･！！自分が俺を殺したって、自分がいなければよかったって、何度も、何度も、血まみれの俺を抱き締めて、自分も血まみれになって、俺に謝るんだ･･･！！佐智は･･････佐智は･･････何も悪くないのに･･････！！」

叫びは闇に吸い込まれ、辺りには大小の涙の雫が降り注いだ。

「･･･佐智は悪くない･･････何も悪くないのに･･････いつも悲しんでる･･･俺は佐智からたくさんもらったのに･･･佐智に伝えてあげられなかった･･･大好きだよって･･･佐智、ありがとうって･･･何も伝えられなくて･･･」


歩み寄り、抱きしめた少年は、堪えきれぬ涙をそのままに、腕の中で大声で泣いた。