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Capsule5:失くした記憶と縁結び
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しおりを挟むふわり、と俺の隣に現れたのは、小さな少年。
黒髪に金色の瞳の少年だ。
頭の後ろで手を組んで、佐智をじっと見つめている。
「・・・佐智だけだったんだ。俺に優しくしてくれたのは・・・」
「・・・お主、俺が見えるのか?」
「あぁ。見えるよ、あんた人間じゃないだろ?」
「・・・」
「・・・俺は人間なんて嫌いだ。人間のせいで、俺も佐智も苦しい事しかなかった。俺には佐智がいたけど、佐智には・・・人間の味方は誰もいなかったんだ。」
ふっと消えたかと思ったら、少年は土を掘り終えて友の亡骸を穴に入れた佐智を背後から覆い被さるように抱きしめた。
「・・・佐智だけだ。俺が好きな人間は・・・。他の奴らなんて・・・みんな死ねばいい・・・佐智を苦しめるやつも、悲しませるやつも、痛い思いをさせるやつも、みんなみんな死ねばいいんだ。」
少年の姿をしたそれは、殺された黒猫。
しゃがんだ佐智に抱きつき、すり寄って甘える。
「佐智をどうするのだ?」
「?どうもしないよ、俺は佐智の傍にいられればいいんだ。佐智以外の人間に飼われたくもないしね。あんたは・・・人間じゃないし、まだ採点中、見極め中。人間の男なら、噛みついて切り裂いて引き裂いて、グッチャグチャにして息の根を止めてやるのに。佐智があんたを気に入ってるし、あんたは人間じゃない、だから見極めてるんだ、佐智を幸せにしてくれるのか。」
佐智に向けている穏やかな視線を俺に向け、その瞳はスッ・・・と鋭く冷ややかなものになる。
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