幸せになりたい神様を拾いました

Capsule５：失くした記憶と縁結び

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佐智に薬を盛り、眠らせ連れてきた昨夜の魔物は死神に引き取らせ、佐智は無事だった事を何度も確認しながら夜を明かした。


呼吸をしている、命がある、ここにいる、触れられる、抱けば重さを感じる。


何度も確かめて、ずっと眺めていた。


そうしたらなんという事だ。

一体どうなっているんだ。

一夜が明けて目を覚ました佐智は、昨日朝までの不機嫌さや不安定さが嘘のように、「好きだ」と言葉にして抱きついてくる。

しかも、俺を『あなた』と呼び、名前を呼ばぬ。


ふくれっ面でも、楽しそうにでも、何度もイザナギ、イザナギと呼んだ声が、隔たりを作られたように、忘れているかのように「あなた」などと呼ぶ。


･･･目の前にいるから「好きだ」と言っているだけのような異様な状況にも、どう扱っていいかわからず咄嗟に眠らせてしまったが、どうするべきか。


何があったんだ･･･考えられる事と言えば、あの魔物が使った薬もしくは、何か術を掛けられていたか･･･

しくじった･･･頭に血が上り、そこまで考えるに至らなかった俺の落ち度だ。



･･･そうだ･･･昨晩の死神･･･



同じく闇に属する奴らなら何か･･･



俺は、日が空にあるうちは家に寄り付かない死神連中が何か知っているのではないか、と考えた。


見たところ、佐智の肉体には異変はさなそうだし、今は俺も肉体を得たままの状態だ。


それも、なぜ突然肉体を得る事ができたのか全くわからないが、好都合なので考えぬ事としよう。


俺は自分の髪をひと房ハサミで切り、眠る佐智の枕元に置いた。


俺がいない間の護りの強化の為だ。