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終.最後の戦い編
第114話(1192年7月) 関ヶ原の戦い④
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関ヶ原中央・出雲軍
出雲軍の中央3万が、源氏の騎馬隊2万に蹂躙されていた。
空を見上げる貴一の顔には、大粒の雨が降り注いでいた。
「広元は雨が来るのを待っていた。騎馬隊を後方に隠してね。天文を見事に読み切ったんだ」
「感心している場合か! 水月、左右の兵を呼び戻せ!」
貴一は手で制する。
「弁慶、もう間に合わない。それに山から下りれば騎馬隊の餌食になるだけだ。山沿いに後退させろ!」
貴一は青龍刀を手に取る。
「弁慶、火縄銃が敵に渡れば、出雲の勝ち目がなくなる。死守しながら後退するよ」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
京・霧の神社(小夜視点)
「敵が来たようね。鬼若、裏手から出て長明様に敵の数を伝えるのよ。できる?」
「楽勝だい!」
7歳になった弁慶と小夜の息子は胸を張って答えた。
「でも、母上と蓮華だけで大丈夫か?」
小夜はニコリと笑う。
「私と蓮華が組んだら弁慶にだって負けないんだから! さあ、お行きなさい」
鬼若は大きくうなずくと神社の塀を飛び越えていった。
小夜は木の香が新しい舞殿に立っている蓮華に声をかける。
「いける? 蓮華」
蓮華は大きく深呼吸する。
「ええ、始めて」
小夜の指が琴の弦に触れた――。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
京・霧の神社前(九条兼実視点)
5000の兵を引き連れ霧の神社に着いた九条兼実は輿の中で首をかしげていた。
「ここに本当に兵糧があるのか? 誰もおらぬ様子。霧も無い」
法然が兼実を見る。
「関白様、霧があったのは数年も前の話です。それより何か聞こえませぬか」
「――琴の音のようだ。誰か見て参れ」
しかし、偵察に行った僧兵は戻ってはこなかった。さらに、何人もの偵察を送るが誰ひとりとして戻ってこない。
侍大将が兼実に言う。
「これは罠でしょうか?」
「確かに奇怪ではある。だが、このままじっとしているわけにはいかぬ。伏兵を警戒しつつ、中に入れ。油断するなよ」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
関ヶ原中央・出雲軍
火縄銃を積んだ荷駄を守りながら後退する出雲軍を、源氏騎馬隊は容赦なく削っていった。
「鬼一、このままじゃ全滅する! 火縄銃を捨てて退くぞ」
「ダメだ。火縄銃を守れ! これだけの銃を作るには1年以上かかる! 俺には時間が――」
「兵より火縄銃が大事だと! 兵も民だということを忘れるな!」
弁慶は貴一を殴り飛ばした。
「水月、退き鐘を鳴らせ! 火縄銃を置き捨てて逃げろ!」
「御意! スサノオ様、すみませぬ……」
退き鐘が鳴ると、出雲軍は荷駄を捨てて逃げ始めた。
しかし、泥まみれになった貴一は立ち上がっても、その場所から動こうとしなかった。
一人の侍大将が貴一の前に立ち止まる。
「ほう、出雲の腰抜けども。大将を置いて逃げおった」
「お前は――」
「和田義盛。源氏の武者をまとめるものだ。みな、こやつを囲め。斬りかかるな! 遠くから矢で――」
いくつもの武者首が宙を舞う。
「ほら、いわんこっちゃない。むやみに近づくからだ。こやつは人ではない。大魔王だ」
距離を取って貴一の周りを御家人たちが囲む。
「先を争ってはならぬ。わしの合図に従い一斉に矢を放つのだ。手柄は矢を放った皆で等分。恨みっこなしだ。皆、弓を構えたか?」
和田義盛が手を上げたそのとき、後方で大声が上がった。
「後方から敵襲! 騎馬隊です! ギャッ!」
貴一を包囲する輪を破って、騎馬隊が突入してきた。
「楊柳!」
「よくもスサノオ様を! この豚野郎ども、エグってやるから覚悟しな!」
出雲軍の中央3万が、源氏の騎馬隊2万に蹂躙されていた。
空を見上げる貴一の顔には、大粒の雨が降り注いでいた。
「広元は雨が来るのを待っていた。騎馬隊を後方に隠してね。天文を見事に読み切ったんだ」
「感心している場合か! 水月、左右の兵を呼び戻せ!」
貴一は手で制する。
「弁慶、もう間に合わない。それに山から下りれば騎馬隊の餌食になるだけだ。山沿いに後退させろ!」
貴一は青龍刀を手に取る。
「弁慶、火縄銃が敵に渡れば、出雲の勝ち目がなくなる。死守しながら後退するよ」
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京・霧の神社(小夜視点)
「敵が来たようね。鬼若、裏手から出て長明様に敵の数を伝えるのよ。できる?」
「楽勝だい!」
7歳になった弁慶と小夜の息子は胸を張って答えた。
「でも、母上と蓮華だけで大丈夫か?」
小夜はニコリと笑う。
「私と蓮華が組んだら弁慶にだって負けないんだから! さあ、お行きなさい」
鬼若は大きくうなずくと神社の塀を飛び越えていった。
小夜は木の香が新しい舞殿に立っている蓮華に声をかける。
「いける? 蓮華」
蓮華は大きく深呼吸する。
「ええ、始めて」
小夜の指が琴の弦に触れた――。
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5000の兵を引き連れ霧の神社に着いた九条兼実は輿の中で首をかしげていた。
「ここに本当に兵糧があるのか? 誰もおらぬ様子。霧も無い」
法然が兼実を見る。
「関白様、霧があったのは数年も前の話です。それより何か聞こえませぬか」
「――琴の音のようだ。誰か見て参れ」
しかし、偵察に行った僧兵は戻ってはこなかった。さらに、何人もの偵察を送るが誰ひとりとして戻ってこない。
侍大将が兼実に言う。
「これは罠でしょうか?」
「確かに奇怪ではある。だが、このままじっとしているわけにはいかぬ。伏兵を警戒しつつ、中に入れ。油断するなよ」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
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火縄銃を積んだ荷駄を守りながら後退する出雲軍を、源氏騎馬隊は容赦なく削っていった。
「鬼一、このままじゃ全滅する! 火縄銃を捨てて退くぞ」
「ダメだ。火縄銃を守れ! これだけの銃を作るには1年以上かかる! 俺には時間が――」
「兵より火縄銃が大事だと! 兵も民だということを忘れるな!」
弁慶は貴一を殴り飛ばした。
「水月、退き鐘を鳴らせ! 火縄銃を置き捨てて逃げろ!」
「御意! スサノオ様、すみませぬ……」
退き鐘が鳴ると、出雲軍は荷駄を捨てて逃げ始めた。
しかし、泥まみれになった貴一は立ち上がっても、その場所から動こうとしなかった。
一人の侍大将が貴一の前に立ち止まる。
「ほう、出雲の腰抜けども。大将を置いて逃げおった」
「お前は――」
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距離を取って貴一の周りを御家人たちが囲む。
「先を争ってはならぬ。わしの合図に従い一斉に矢を放つのだ。手柄は矢を放った皆で等分。恨みっこなしだ。皆、弓を構えたか?」
和田義盛が手を上げたそのとき、後方で大声が上がった。
「後方から敵襲! 騎馬隊です! ギャッ!」
貴一を包囲する輪を破って、騎馬隊が突入してきた。
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