革命好きが源平時代に転生したら ~いい国作ろう平民幕府~

キムラ ナオト

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終.最後の戦い編

第112話(1192年7月) 関ヶ原の戦い②

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 ゴクリとつばを飲み込んで、あとを追いかけた。
 すばるが奥へ入ったのを確認して、倉庫の中をそっとのぞく。
 中は、小さな窓があるが薄暗い。外に比べたらひやっとして、土のような臭いがする。
 柄のついた農具がいくつか立ててあって、小さなスコップやバケツが棚に置いてある。
 コンクリートの床には野菜・花用園芸土と書かれた袋や肥料が山積みだ。
 大小いろいろな鉢やプランターもたくさん置いてある。
 研究施設かもしれないな。確かめる必要があるぞ。
 思い切って、一歩中に入ったら、

 ヌッ。

 急に人影が私の前に出てきた。

「ひいいっ」

 思わず後ずさったら、足を段差にとられて体が後ろに傾いた。
 ……あ、やばい。このままだと後頭部を強打コースだ。
 と、思ったら、背中に誰かの手がまわって、支えられた。
 赤茶色の髪が私の頬にかかる。
 長い前髪の下は見えないけれど、目が合った感じがした。
 そのまま背中に添えられた手にぐっと力を入れられ、体を引き起こされる。

「……ありがとう、風斗」

 お礼を言うと、背中を支えてくれていた手がゆっくりと離れた。

「どういたしまして」

 風斗は氷がとけるような、か細い声で答えると、ニッとくちびるを上げた。

「あ、里依ちゃん! ぼく、片付けるから外にいてくれて良かったのに」

 奥からすばるがひょっこり出てきた。

「風斗、鉢の整理してくれてありがとう。じゃあ、今から植えようか」

 すばるが言うと、風斗がうなずき、土が入った袋を持ち上げて倉庫を出て行った。

「里依ちゃん、今から一緒に苗を植えよう」

「苗?」

「うん。校長先生が今朝持ってきてくれたんだ。行こう」

 すばるに引っ張られて倉庫を出る。
 風斗がスコップという道具でザクザクと土を掘ってる横で、すばるが立ち止まった。

「じゃあ、里依ちゃん。赤玉土をプランターに入れてくれる?」

 すばるが畝の近くに置いてあった袋をよいしょと引っ張った。
 近くにあったプランターという入れ物とスコップを渡される。
 ふむ。この袋の中をこっちのプランターに入れればいいんだな。
 ざばーっ!
 勢いよくすべて入れると、すばるがぎょっとした。

「うわあっ、里依ちゃん! 入れすぎだよ! 百パーセント赤玉じゃダメ!」

 すばるがあわてて、私の手を止める。

「え、全部入れるのでは?」

「いや……他に土も入れるから……じゃあ、里依ちゃんにはこっちをしてもらおうかな。こっちにはもう土を入れてるから……」

 すばるが土が入ったプランターと、黒い小さな入れ物に入った植物を持ってきた。

「里依ちゃん、ミニトマト気になってたよね。ちょうど一ポット残ってるんだ。植える?」

「え……あ、うん」

 渡された苗をじいっと見つめる。
 これが毒々しい赤い実がなる植物だな……
 ふわっと香る独特のにおい。
 まだ花も実もなってないのに、こんなにおいがするのか。

「まずは、このミニトマトに水分をあげて……」

 すばるの言う通りにじょうろで水をあげ、苗と同じくらいの穴を土にあけ、そっとミニトマトの苗を入れる。
 最後に小さい支柱を立てて茎をひもで結んだ。
 緑の葉っぱに細い茎。
 なんだか頼りない。
 強風が吹いたら、折れてしまいそうだ。
 こんなか弱い植物が、今からどんな風に育っていくんだろう。
 ちょっと興味が出てくるな。

「葉っぱが大きくなって、茎がぐんっと伸びて、花をつけて実がなって。想像するだけでわくわくするよね」

 すばるがうれしそうに言って、スコップを置く。

「大きくなってね」

 そう言って、すばるが葉っぱをさわると、返事をするように水滴がはねた。

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