革命好きが源平時代に転生したら ~いい国作ろう平民幕府~

キムラ ナオト

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終.最後の戦い編

第111話(1192年6月) 関ヶ原の戦い①

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 京都御所・朝議の間

 貴一たちは車座に座り軍議を続けている。
 木曽義仲が貴一を見て言う。

「わしもむやみな速戦は反対だ。この状況には見覚えがある。わしら木曽軍が上洛したとき、平家は戦わず都落ちをした。わしは平家を臆病者だとののしったが、反撃の機会をうかがうための撤退だった」

「僕たちは勝ってはいますが、奪った所領に比べ、兵は殺せていません。指揮官級の地方豪族は東に逃げました」

 熊若の意見に貴一が苛立つ。

「熊若、何が言いたい」

「敵の強さは落ちていません。それに引き換え、出雲軍は急速に軍を膨らませ練兵が追い付いていません」

「弱兵を補うための火縄銃だ! もういい、軍議は終わりだ!」

 貴一は車座から離れ、一段高い天皇の御座に立った。

「俺は誰だ! 言ってみろ、長明!」

「……出雲大社の最高指導者であり、現人神スサノオ様です」

「そうだ! 作戦を今から言い渡す!」


 貴一と弁慶率いる6万の歩兵と砲兵は鎌倉を目指し、義仲と巴御前は北陸道を5000の騎馬隊で進むことが決まった。

「義仲には騎馬隊を預ける。北陸道では義仲は英雄だ。速戦で越後まで進んだ後は、関東を背後から刺せ。そうすれば鎌倉の前線も動揺する。巴御前、息子の仇討ちだ」

「ご配慮、感謝します」

 巴御前が頭を下げる。

「法眼様、僕は何をすれば――」

「熊若は神楽隊とともに1万5000で京に残り兵糧を守れ。比叡山には西国から追い出された僧兵が集まっている。やつらの動きに注意しろ」

「そんな、僕を先鋒に加えてください!」

「ダメだ! お前は婚姻したばかりだ。蓮華を守ってやってくれ」

「それとこれとは話が別です!」

 貴一は優しい顔になる。

「お前は優しい。俺なんかよりも人として立派だ。だから死んじゃいけない」

「法眼様!」

「熊若! 師匠の言うことは何だ!」

「……絶対です」

 貴一は熊若をもう見なかった。

「鎌倉を3カ月以内に落とす!」

――――――――――――――――――――――――――――――――

 翌日から出雲大社の猛攻が始まった。
 近江国を3日で落とした出雲軍は、美濃国に入ろうとしていたが、関ヶ原に入ると、まったく前に進めなくなった。

「間に合わなかったか……」

 敵方から聞こえる火縄銃の音を聞いて、貴一は唇を噛み締めた。

――これからは死者が増える。

 貴一の元に伝令が駆け寄る。

「敵軍が関ヶ原に集結しております!」

「見ればわかる。隠す気はないらしい」

 貴一の目の前に源氏の大軍が現れた。

「弁慶を下げさせろ。陣を構え直す」


 半刻後、出雲軍6万と源氏軍5万が対峙した。

 源氏軍の中から鎧兜を着ていない男が、両軍の間に出てきた。
 従者が敷物を広げ、茶道具を置く。

「鬼一! 茶を飲まぬか」

 貴一は1人馬を進める。こちらは銀鎧に白のマント姿だ。

「広元、元気そうだな」

「いいや、おのれのせいで寝る間も無い。休息につきあえ」

 貴一は馬から降りて敷物に座った。

「火縄銃を揃えたようだな。俺の予想より半年早い。まったく手強い奴だよ」

 広元は茶をそそいだ器を渡す。

「戦力は五分五分となった。これからは互いに死者を積み上げるだけだ。私は以前、おのれに覚悟を問うた。理想を実現させるために、この国の民半分を殺せるか、と」

「それは覚悟じゃない。権力者の言い訳だ。お前もそう思うから、持久戦をやめて決着をつけに来たのだろう?」

「それだけではない。もう一つの案を持ってきた。戦を止め、関ヶ原を境に両者で分割統治しないか。民の往来を自由にして政治で戦うのだ。おのれが掲げる平等の国と、私が掲げる公正の国だ。決めるのは民の意思だ。おもしろいとは思わぬか?」

「そんなことをしていいのか? みんな俺の国に来るぞ」

 広元は茶を口にした。

「どうかな。才を評価してもらいたい者や意欲のあるものが東国に移り、有能無能関係なく平等を求める者が西国に移る。私は東国が栄えると思っている」

「奢った考え方だな。お前が無能と呼ぶ民の下支え無しには国は成り立たない」

「ならば、おのれが勝つ勝負だ。受けるか? 和平を」

「断る。俺は生きているうちに結果が見たい。お前の見え透いた策にものらん」

 貴一と広元は目を合わせると笑い合った。

「時を稼ごうと思ったが、見抜かれたか。ならばここで決着をつけよう」

「――ありがとう。俺に付き合ってくれて」

 二人は立ち上がる。別れ際に広元が言った。

「鬼一、何を急いでいる?」

「――早く家に帰りたいだけさ」

 2人が陣営に戻ると、出雲・源氏の両軍の動きがあわただしくなった。
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