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最初からお飾りの正妃として嫁いできたのだから覚悟はあったものの、勿論不安もあった。
居心地よく整えられた部屋と侍女達の心配りによってその不安は自然と和らぎつつもある。
それでも、隣を歩いた王太子殿下の顔を思い浮かべると少し胸が苦しくなった気もした。
彼は式の後の披露宴で優しくエスコートしてくれ、最後にはこれから宜しく頼むと目を下げて笑った。
そんな事を思い返していると扉が優しく叩かれる。
私は緊張しながらもゆっくりと扉を開け部屋の中へ彼を招きいれる。


「すまない。思ったよりも時間がかかってしまい待たせてしまったかな」
そう言って彼は申し訳なさそうに眉を下げる。

「私もこの部屋の居心地に酔っていたのでそれほど長くは待ってはいませんわ」
「気に入ってくれたなら良かった。君には本当に感謝しているんだ」
「感謝?」
「あぁ。聖女の事を受け入れてくれて本当に有難う。私も彼女も心から感謝している。これから何か不便な事があったら遠慮なく言ってくれ」
「そんな。私は殿下も聖女様も心からお慕いしております。ご一緒にお二人とこの国を支えられる事を嬉しく思いますわ」
私がそう答えると彼は目を見開き破顔すると優しく私の手をとり口づけた。
「私も貴方と彼女と共にこれからもこの国を支え導くと誓おう」
私は思わず顔を赤らめてしまい目を伏せる。
「そして私の事はクロヴィスと呼んでいい」
「クロヴィス殿下?」
「クロヴィスだ」
「クロヴィス様・・・」

そして優しく私の手を握ったまま、手触りの良シーツの上へと導いた。






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