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しおりを挟む明日は私の誕生日。
父と母は私に興味がない為、形ばかりのお祝いだけでいつも一緒に祝ってくれるのはウィルだけだった。
そんなウィルも今年は祝ってくれない。
正しくは当日は一緒に祝えないので、今日祝ってくれるらしい。
これはしょうがない事。わかっている。
明日は彼女の母親の命日らしいから。
何故だろう。
ウィル達の噂は聞きたくないのに、聴こえてくる。
でももう慣れてしまった自分もいる。
2人の関係を知ってしまった時私は決心した。
以前は自分が壊れてしまうのではないかと。
ウィルを憎んでしまうんじゃないかと。
怖かった。
でも結局私はウィルが好きらい。
勿論どこかに腹黒い気持ちも感じるが、彼の噛み締める様な苦しい表情を見た今。
彼には笑っていてほしいと思う。
その上で私は私の幸せも考えた。
私は彼以上に想える人には出会わない
彼には今も、これからも笑っていてほしいのだ。
ウィルの訪れを知らせるチャイムが鳴る。
「フィー!誕生日おめでとう!」
「ウィル有難う。さあ、此方に座って」
私はテラスに用意した席に案内する。
「ウィー。今回当日に一緒にいられなくてすまない。君に喜んで貰える様プレゼントを持ってきたんだけど、受け取ってもらえるかな?」
「勿論よ!見せて貰える?」
ウィルは安心した様に微笑むと、私の大好きなゴデチアの花束とブルーサファイアのネックレスを取り出した。
ゴデチアの花は大好きだ。でも今ではそれが、私のこれからを暗示している様で皮肉にも笑ってしまった。
ネックレスは彼の瞳の色で彩られ、嬉しさと交わる複雑な気持ちが胸を締め付ける。
私が瞳を潤ませるのを見て、ウィルが付けてあげるとゆっくり立ち上がった。
私の胸元で光る彼の色。
ああ。なんて幸せなんだろう。
私達は他愛もない話をしながら時間を過ごした。
穏やかで優しい時間。
ふと私な立ち上がり、テラスの手摺りに腰かけた。
「フィー?何してるんだい?そんな所危ないよ!」
僕はゆっくりと立ち上がったフィーを目で追って思わず声を荒げた。
それでもフィーは何も言わず、僕を見つめてくる。
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